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上関原発予定地 裁判官視察 直接アピールに手応え 反対派 漁場への影響など訴え

 中国電力上関原発建設予定地(上関町)の公有水面埋め立て免許取り消しを求める訴訟で、山口地裁の裁判官3人が現地と同町祝島を視察した28日。「原発建設が生活や漁場に与える影響を裁判官に認識してもらえた」。案内した計画反対派の原告は、司法に島の現状を直接アピールできたと手応えを示した。(佐藤正明、久行大輝)

 住民の大半が計画に反対する祝島。約30年にわたる上関原発関連の訴訟を通じ、裁判官の現地訪問は初めて。午前10時50分、桑原直子裁判長たち3人は、住民約80人の拍手に迎えられた。約1時間半、島の各地点で、原告の住民や弁護士から、重大な事故や災害時の避難の難しさ、島の歴史、景観の意義などの説明を受けた。

 集落を縫う細い路地では、原告の一人、漁業岡本正昭さん(67)が年中タイの釣れる予定地周辺の好漁場、地域での消防団活動を説明したという。「大地震が起きれば、古い家が崩れて細い道をふさぐ。自力で逃げられないお年寄りも多い」

 予定地は祝島の対岸約4キロ。同じく原告の中村隆子さん(86)は自宅そばの高台で、裁判官に「目と鼻の先」と伝えた。「道は急で滑りやすい。事故が起きた時、海が荒れる冬場に船で避難できるのか」と問い、「島の抱える課題を裁判官に分かってもらえたら、うれしい」と期待した。

 原告側の解説は、防火、防風のための伝統建築「練塀」や、千年以上の歴史を持つ神舞にも及んだという。午後、祝島を離れる裁判官たちを住民約60人が手を振り見送った。

 予定地では反対派約40人が海岸に待機。「生き物たちの声に耳を傾けてください」と書かれた横断幕と希少生物の写真パネルも掲げ、視察を見守った。  視察は約5時間半。上関原発を建てさせない祝島島民の会前代表の山戸貞夫さん(66)は「島の現状を体感してもらい前進したと感じる。賢明な判断をお願いしたい」と望んだ。

 一方、同行した県の担当者は「現地での進行協議という裁判上の手続きで来た」と述べるにとどめた。

(2016年7月29日朝刊掲載)

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