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「新藤さんの遺志継ぐ」 大林監督 思い出語る

 郷里の尾道市に帰省中の映画監督大林宣彦さん(74)は1日、中国新聞のインタビューで、先月29日に100歳で亡くなった広島市佐伯区出身の映画監督新藤兼人さんとの思い出などを語った。「ヒロシマに生まれ、同じ業界にいた。親子の絆のようなものを感じていた」と死を惜しんだ。

 訃報は、帰省中の新幹線の電光ニュースで知った。悲しみ、悔しさがこみ上げ、おえつを抑え切れなかったという。「平和を願う同志を亡くし、喪失感で胸がいっぱいになった」と打ち明けた。

 新藤さんは青年期、大林さんの実家が所有する尾道市内の民家に身を寄せた時期もあったという。5、6歳のころ、「新藤おじさん」にずいぶんかわいがってもらったと母から聞いていた。「毎週末、活動写真を見た映画館では、隣に新藤さんがいた」と記憶をひもといた。

 ヒロシマへの思いとともに「書き残せなかった部分を、僕たちが引き継いでいきたい」と誓う。「新藤さんは限りある命を存分に使い、自分たちに映画という手紙を残してくれた」と信じているからだ。(木原由維)

(2012年6月2日朝刊掲載)

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