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社説・コラム

『この人』 海上自衛隊呉地方総監に就任した 池太郎さん

愚直に 経験通じた信念

 江田島市の海上自衛隊幹部候補生学校長、教育航空集団司令官を経て、呉地方隊のトップに就いた。「方針は『愚直』の一つしかない」。就任後初の訓示では、「非常の際に、自分だけ助かりたいという気持ちに負けず、任務を遂行してほしい」と求めた。航空部隊の操縦士として警戒監視に当たってきた自身の経験に基づく信念だ。

 艦船とは異なり、航空機は通信でしか指揮官に現場の様子を伝えられない。「任務の達成度が低くても正直に伝える。それができなければ仲間を危険にさらし、上官の判断を誤らせる」と戒める。

 呉地方隊は、和歌山県から宮崎県に及ぶ瀬戸内海、太平洋エリアをカバーする。当面の課題として南海トラフ地震への対応を挙げる。「即応体制から復興支援を視野に入れた計画準備を怠らない」

 中国の海洋進出、北朝鮮の核兵器やミサイル開発など東アジアの情勢は緊迫の度合いを高めている。国内では安全保障関連法が施行された。海自の役割の変容に注目が集まる。多数の艦船を抱える呉基地は「最大限の後方支援体制を備えておかないといけない。より質の高い訓練も求められる」と説明する。

 「母港呉市には温かさを感じる」と愛着を示す。海自カレーや日本遺産認定など「歴史に裏打ちされた互いのつながりを観光にも役立てる取り組みもしっかり進化させたい」。

 市内には隊員約4700人が住み、家族や艦船の物資購入を合わせると経済波及効果は大きい。「例えば艦船の一般公開のような行事も生かして連携を深め、活性化に貢献したい」。妻と1男2女を、出身地である愛知県岡崎市の自宅に残して単身赴任。海将。(見田崇志)

(2016年8月26日朝刊掲載)

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