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山口県、中電の補足説明文書開示 上関埋め立て免許延長許可 可否判断の経緯判明

 山口県が中国電力に同県上関町での原発建設計画の公有水面埋め立て免許延長を許可した経緯を巡る中国新聞の情報公開請求に対し、県は12日、中電に求めた7度の補足説明と回答文書を初めてほぼ全面開示した。県は回答期間を約1年に延ばした2013年3月の5度目以降、国が指定した重要電源開発地点の有効性に絞って質問。ただ、県が可否判断の決め手とした回答が出るまでに3年余りかかり、長期審査の要因となった内情が判明した。(井上龍太郎)

 同地点は電源開発の推進が特に重要な場所として、経済産業相が指定。上関原発は05年に指定された。村岡嗣政知事はことし8月に延長許可した際、中電が国から、同原発の指定を「引き続き有効」とする見解を得た点を理由に挙げた。

 開示された補足説明と回答文書は計227枚。これまでは黒塗りだった開示文書によると、県は中電の4度の回答を踏まえ、それまで尋ねていなかった同地点の指定への質問を5度目の説明要請に盛り込んだ。

 県は「重要電源開発地点に指定された上関原発の位置付けが変わる見込みはないか」を質問。中電は、指定制度の見直しを「想定していない」とする経済産業省資源エネルギー庁の書面を添付し、「変わる見込みなし」と回答。両者は6度目も同じ問答をした。

 だが7度目も位置付けをただす県に、中電が回答内容を変更。「上関原発の重要電源開発地点指定は引き続き有効」とするエネ庁の新たな言い回しの書面1枚を添えた。県はこのエネ庁見解を受け、延長申請の許可を判断した経緯が公開文書からも確認できる。

 県港湾課は、審査は中電の提出文書だけで判断しており、「中電に答え方を示したり、国に問い合わせたりはしていない」とする。

 県が最初の補足説明を求めたのは延長申請直後の12年10月。県は可否判断の先送りを続ける一方、情報公開請求には「意思形成に著しい支障が生じる恐れがある」として全面的に黒塗りとしていた。県は審査終了後には「公開できる情報を出す」としており、中国新聞は、知事が公有水面埋め立て免許の延長を許可したことし8月3日、あらためて情報公開請求した。

【解説】「時間稼ぎ」の感 否めず

 山口県が上関原発計画に伴う海の埋め立て免許延長を許可するまで中国電力に求めた7度の補足説明と回答の内容からは、なぜ3年10カ月もの時間を要したのか疑問が湧く。国が原発の新増設の方針を明らかにしていない中で、エネルギー政策に上関原発をどう位置付けるかを見定める「時間稼ぎ」だった感は否めない。情報公開請求に対し、ほぼ黒塗りにしてきた対応も「県民の知る権利」に応えていない。

 2012年10月の1度目の補足説明は質問が17項目に及び、回答期限は約20日。13年1月の4度目の補足説明までは同様の短期集中のやりとりだった。ところが、安倍政権誕生後の13年2月、故山本繁太郎前知事が不許可方針を撤回すると、同3月の5度目の補足説明からは回答期限を約1年に延ばし、質問は数項目に。焦点は「重要電源開発地点に指定された上関原発の位置付け」に絞られ、その回答に3年以上を費やした。専門家は「電話で確認できる内容」と指摘した。

 県は情報公開条例に定める「意思形成過程」を理由に内容を黒塗りにしてきた。ただホームページで公開されている経済産業省の「長期エネルギー需給見通し」「第4次上関町総合計画」まで非開示にしていたことが今回明らかになった。埋め立て許可権限は知事にあるとしても、住民に賛否があり関心の高い原発建設計画を巡る議論を今後もブラックボックスの中で進めるのであれば県民の理解は得られない。(佐藤正明)

上関埋め立て免許延長許可[識者談話]

臆測招く対応

 立山紘毅・山口大教授(憲法学・情報法学)の話 黒塗り(非開示)にしなければならない内容とはいえない。山口県は、なぜいらぬ臆測を招くような対応をしてきたのか、疑問が残る。県情報公開条例の第1条には「県民の知る権利を尊重し」とある。原則開示の発想が弱かったと言わざるを得ない。

 県は「意思形成過程」を理由にほぼ非開示にしてきたが、同条例では「容易に区分できるときは、除いて開示しなければならない」としており、誰もが入手できる上関町総合計画などをなぜ黒塗りにしたのか。公有水面埋立法で知事は事業者に対し特別に免許を出すので、自らの判断で免許を出さなくても違法に問われることはない。県民に情報を開示し、意見を募ってもよかったはずだ。

判断 中電寄り

 本田博利・元愛媛大教授(行政・地方自治法学)の話 中国電力が免許の延長申請をしてから山口県が許可するまで4年近く。なぜこんなに時間がかかったのか。5~7度目の県の質問と中電の回答はほぼ同じ内容で、県が可否判断を先延ばしてきたのは明らか。県民の利益を損ねている。

 中電は最初の回答で、期間中に工事を終えられなかった理由に第三者の工事区域への立ち入りを挙げた。中電は申請時、福島第1原発事故の影響のみを挙げており、理由を追加するなら申請内容自体を変更するべきだ。県の許可判断は中電寄りと言わざるを得ない。判断の決め手とされる国の文書は、資源エネルギー庁の担当課長名の書面1枚だけだった。県は許可に至るまでの経緯を県民に分かりやすく説明すべきだ。

(2016年9月13日朝刊掲載)

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