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基地沖の魚礁整備 難航 移設で藻場減少…岩国市計画

工事中断 市費で検証へ

 岩国市の米海兵隊岩国基地の滑走路沖合移設に伴う藻場の減少などを受け、水産資源の回復を目指す市の魚礁整備事業が難航している。米軍再編交付金を使って2012年度に始めたが、会計検査院から実効性を疑問視され、工事を一時中断。16年度は市費を投じて事業効果を検証する方針で、20年度を予定する整備完了時期はずれ込む可能性がある。(松本恭治)

 市の計画では、事業の対象エリアは、岩国基地東側の米軍提供水域(18・7平方キロ)内に設定されている漁業操業許可区域に隣接する海域の4カ所。1カ所当たり3万平方メートルの範囲に、重さ1トン級の石やカキ殻などを使った魚礁を約50基ずつ並べ、岩場を好むメバルとカサゴ、マダコの増産を目指す。

設置後 砂に沈む

 市は基本設計を経て13年度に着工、対象の4カ所のうち2カ所で整備を進めた。しかし14年度末、設置した魚礁が海底の砂の中に埋まるように沈んでいることが分かった。15年6月に交付金事業を調べた会計検査院からこの点を問題視され、15年度は新たな魚礁設置を断念して沈下の原因調査に切り替えた。

 魚礁整備に使った12~15年度の交付金は計7440万円。16年度は交付金2550万円を含む3100万円を当初予算に計上し、魚礁の素材を軽量化するなどの沈下対策をした上で工事を再開する計画だった。しかし今年5月、会計検査院から再び事業内容や効果に疑問の声が上がったという。

交付金活用休止

 会計検査院に事業効果がないと判断されれば、交付金の返還を迫られる可能性もある。このため市は交付金の活用を急きょ休止し、市費で事業効果を検証する方針。16年度一般会計補正予算案に3400万円を計上し、開会中の市議会定例会に提案している。

 市は17年度も検証を続ける考えで、水産港湾課は「魚の餌となるコケなどの付着状況も確認した上で、18年度から交付金を使った工事を再開したい」と説明。市漁協の上村高志参事(64)は「一日も早く整備を終えてほしいのが漁業者の願い。推移を見守りたい」としている。

(2016年9月16日朝刊掲載)

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