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フィルムに刻む被爆建物 写真家井手さん 没後10年 回顧展 色あせぬ情熱感じて

 ヒロシマを撮り続けた写真家、井手三千男さん(1941~2006年)の没後10年に合わせた作品展が27日、広島市中区の原爆資料館東館地下1階で始まった。街中から姿を消した被爆建物を中心に、90~04年撮影の写真39点を展示。被爆の記憶と都市の変貌を伝える。無料。

 作品展のタイトルは「あぁ、ほうじゃったねぇ。井手三千男の残した被爆建物」。93年に解体された広島赤十字・原爆病院本館(中区)、JR広島駅前の再開発で13年に取り壊された旧住友銀行東松原支店(南区)などの在りし日の外観や内部の造り、被爆の傷痕を捉えたカットが並ぶ。

 学徒の遺品や溶けたガラス瓶など多くの被爆資料の写真を1枚のパネル(縦104センチ、横73センチ)に貼り付けた作品「原爆のかたち2002」も並び、来館者が見入っていた。

 井手さんは安佐北区出身で、川崎市にあった多摩芸術学園写真科卒。広島市内の広告会社勤務を経て68年に写真家として独立した。原爆ドーム(中区)と厳島神社(廿日市市)の世界遺産登録用の公式資料や、市出版の「ヒロシマの被爆建造物は語る」(96年刊)の写真を担当した。

 98年から原爆資料館の資料調査研究会の委員を務め、原爆記録写真も調べた。生前に親交があり、今回の展示に携わった同館情報資料室の菊楽忍さんは「井手さんは被爆建物の造形の特徴を理解した上で、季節や時間帯もよく考え、巧みな構図と光でフィルムに残した。姿を消した建物を市民に懐かしんでほしい」と話す。11月8日まで。(水川恭輔)

(2016年9月28日朝刊掲載)

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