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社説・コラム

社説 大阪府警機動隊員の暴言 背景にある意識を問う

 沖縄県の米軍北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設工事を巡り、現場を警備中の大阪府警の機動隊員2人が反対派に向けて「土人」「シナ人」などと暴言を吐いた。映像でも記録されているが、本当に勤務時間中の公務員の言動なのか、耳を疑うばかりだ。

 菅義偉官房長官は「(発言自体は)許すまじきこと」と非難し、政府は火消しに躍起だった。おととい府警は2人を戒告の懲戒処分としたものの、それで済む問題ではあるまい。

 事態の発覚後、翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事が強く求めたように、警察庁は県外から応援に来ている機動隊員を現地からいったん撤収させた上で、人権尊重に根差した警察官教育を徹底すべきだ。誤った個人的言動がいかに警察と市民の信頼を損なうか、よく認識してもらいたい。

 さらに指摘しておきたいのは、松井一郎大阪府知事の発言である。ツイッターに「表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命職務を遂行しているのが分かった。出張ご苦労様」と隊員をねぎらう投稿をしたことには首をかしげる。

 記者団には「無用な衝突を避けるため警察官が動員されている。混乱を引き起こしているのはどちらか」とも述べたが、暴言に公務との脈絡は全くない。かえって無用な摩擦が生じた。松井知事は日本維新の会の代表だが、身内の沖縄県総支部から抗議を受ける始末である。

 琉球新報によると、自民党から共産党まで、多くの沖縄県選出・出身国会議員が暴言を問題視している。沖縄の人々の心情を深く傷つけたといっていい。明治期の「琉球処分」以来、差別的な扱いに苦しんだ歴史を思い起こさせるからだろう。

 1879年、政府は廃藩置県で琉球藩を廃止して「沖縄県」と命名、住民たちは固有の文化に対する締め付けを受けた。1903年には大阪で開かれた内国勧業博覧会の展示で沖縄の女性2人が見せ物扱いされる「人類館事件」が起きた。

 暴言について沖縄大の仲地博学長は「沖縄差別が強かった戦前に時代が逆転したように感じた」と述べた。戦後70年が過ぎたのに、あり得ない言葉を聞いたという思いに違いない。

 翁長知事も記者会見で、垂直離着陸輸送機オスプレイ配備の撤回などを求めた2013年の東京要請行動の際、沿道から侮辱的な言葉を浴びせられたことを振り返った。そうしたヘイトスピーチ(憎悪表現)はネットなどでも拡散していよう。

 昨年には作家百田尚樹氏が、自民党の勉強会で「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」と発言した。「政治的な圧力でつぶせという趣旨ではない」と釈明したが、これもまた、悪感情で沖縄を語る契機になっているのではないか。

 北部訓練場では、安全性に疑問が残るオスプレイの配備が基地の強化につながるとして、連日の抗議行動が続いている。それに対して、政府は強引に押し切る構えを崩していない。

 いずれの暴言、暴力も私たちは肯定しない。戦後の沖縄には非暴力による抵抗の伝統もある。問題の解決は政府と沖縄県の、対等な立場の話し合いしかあるまい。その前に、政府は機動隊員の暴言の背景にある意識を問いただすべきだろう。

(2016年10月23日朝刊掲載)

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