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故槙坪監督モデルに映画 広島ロケ 成長の姿描く

 広島市安佐北区で幼少期を過ごし、昨年9月に71歳で亡くなった映画監督の槙坪多鶴子さんをモデルにした映画「少女の夢~いのちつないで~」を、家族や友人の監督が製作する。戦後間もない広島市の山村で暮らす少女の成長を通じ、命の尊さや自立の大切さを伝える。7月中旬から、安芸太田町などで撮影に入る。(有岡英俊)

 脚本は、夫の映画プロデューサー光永憲之さん(64)=東京都世田谷区=が、槙坪さんの幼少期の体験を基に書いた。山あいの小さな村の少女が、原爆による後遺症や差別に苦しむ人、家族、地域との関わりの中で成長する物語。槙坪さんと20年来の友人の山崎博子さん(60)=大阪府守口市=が監督を務める。

 槙坪さんは呉市生まれ。原爆投下時は5歳で、安佐北区安佐町久地の父親の実家に疎開していた。自宅で大きな地鳴りを聞き、母の白いブラウスに染み込んだ黒い雨の跡が忘れられなかったという。

 生前、命の大切さや介護をテーマに作品を撮り続けた。価値観の違う人同士がどう関わり、互いに認め、助け合うのか。共生や自立の意義を問い掛けてきた。山崎さんは「彼女のメッセージを、今を生きる人たちに伝えたい」と力を込める。

 光永さんや山崎さんは2月から、安芸太田町の井仁の棚田や太田川、佐伯区の水内川などをロケ地の下見に訪れ、準備している。7月18日に撮影を始める予定で、安佐北区の市民劇団メンバーにも出演を打診している。

 光永さんは「命の尊さ、自立、共生が彼女の一貫したテーマだった。彼女の作品の原点である広島の体験に触れ、どう生きるかを見つめるきっかけにしてほしい」と話す。

まきつぼ・たづこ(1940~2011年)
 映画の記録係などを経て企画制作会社を設立。1986年、「子どもたちへ~いのちと愛のメッセージ」を監督、文部省特選となる。広島を舞台に若者の性をテーマにした「若人よ」、自閉症の子とその家族を描いた「星の国から孫ふたり」などがある。

(2012年6月27日朝刊掲載)

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