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連載・特集

中国5県2016年回顧

 中国地方5県では2016年、広島空港の民営化方針を広島県が決めたり、中国電力の上関原発建設計画で海の埋め立て申請の延長を山口県が許可したりするなど、大きな政策判断があった。島根県は、JR三江線の18年春の廃止決定を受け、関係機関と代替バス路線の検討を始めた。各県の担当記者が、県政の動きを中心に1年を振り返った。

広島県

知事2期目 総括まい進

 オバマ米大統領の訪問や広島東洋カープのリーグ優勝などで「広島」に注目が集まる中、来年11月に任期満了を迎える湯崎英彦知事の2期目の仕上げに向けて突き進んだ1年だった。

 県庁を拠点とし、瀬戸内海の観光振興を目指す官民組織「せとうちDMO」が4月に発足。出資による財政支援、利用者特性に応じたマーケティングの2本柱で、観光産業の活性化に取り組む。1期目から掲げてきた「瀬戸内・海の道構想」の具体化だ。

 人材育成の分野では、中高一貫のグローバルリーダー育成校(GL校)の開校に向けた動きが本格化した。建設費約42億円を投じる大型プロジェクト。2月に基本構想をまとめ、5月に大崎上島町への設置が決まった。10月には敷地中央に地域開放ゾーンを設ける設計案を発表し、急ピッチで全体像が見え始めた。

 広島空港(三原市)の民営化方針、県営広島西飛行場跡地(広島市西区)の活用方針などの政策判断も相次いだ。ソフト面では、5年ぶりに昨年改定した県総合計画を反映。仕事と暮らしの両方を充実させる「欲張りライフ」を新たなライフスタイルとして打ち出し、県民への浸透を図っている。

 現在、査定作業が進む来年度当初予算の編成が2期目の集大成となる。12月20日に発表した県政運営の基本方針には、キーワードとして「行動」を盛り込んだ。目まぐるしく動いてきた県政に、2期8年の具体的な成果をどれだけ示せるかがポイントになる。(藤村潤平)

山口県

原発埋め立て免許延長

 山口県の村岡嗣政知事にとって、2014年2月の就任後で最大の政治決断だったといえる。中国電力が同県上関町で計画する上関原発建設で、中電が申請していた海を埋め立てるための免許の延長をことし8月3日に許可した。11年3月の福島第1原発事故で中断した工事の再開を巡り、県が握ってきた判断の主導権を、中電に引き渡した。

 免許の期限は19年7月6日に延びた。しかし許可から5カ月近くが経過した今も、予定地周辺に変化はない。村岡知事が「原発本体の着工時期の見通しがつくまでは埋め立て工事をしない」よう要請したからだ。

 原発再稼働を優先し、新増設を「現時点では想定していない」とする政府方針もあり、本体の着工への見通しは立たない。ある自民党県議は「当分、上関原発は前に進まない」とみる。

 米海兵隊岩国基地(岩国市)では、最新鋭ステルス戦闘機F35Bの配備計画を今月21日に容認した。10月に米国で出火する重大事故があり、いったん留保した上での結論だった。

 17年は米空母艦載機移転計画への対応を迫られる。政府は今月22日、県だけに年間約20億円を支給してきた都道府県向け交付金を3年間延長すると決めた。安倍晋三首相(山口4区)の地元で、国策とどう向き合うかが引き続き問われる。(村田拓也)

岡山県

「信任投票」で知事再選

 教育再生や産業振興を主要施策に掲げた伊原木隆太知事が、10月の知事選で無所属新人を破り再選された。投票率は33・91%と過去最低を記録。自民、民進、公明各党が推薦する「信任投票」の様相となり盛り上がりに欠けた。

 県は現在、2017~20年度の新たな総合計画を策定中。教育や産業などを柱とする現プランの大枠は維持する方針だ。県議会の6割余りを占める自民党関係者などからは「もっと独自色を出すべきだ」との声もあり、思い切った施策が打ち出せるのか注目される。

 4月には、三菱自動車の燃費不正問題の影響で、主力工場の水島製作所(倉敷市)で軽自動車の生産が一時停止した。11月には従業員の昼夜2交代制勤務が再開したが、日産自動車の傘下に入ったことが、関連企業にどのような影響を与えるのか、まだ推し量れない状況だ。(加茂孝之)

島根県

三江線の代替バス検討

 三次市と江津市を結ぶJR三江線(108・1キロ)の2018年春廃止が決まり、県は、中国運輸局、沿線自治体、JR西日本などと代替バス路線の検討を始めた。7月の参院選で導入された島根、鳥取県の合区選挙区を巡り、県議会や市町村議会は、解消を求める意見書案などを相次いで可決した。

 15年国勢調査に基づく県の合計特殊出生率が1・78で確定し、全国2位となった。だが、70万人を割り込んだ県人口は減少傾向に歯止めがかからない。15年に策定した地方版総合戦略の「実行初年度」だが、柱となる人口減対策の加速が求められている。

 中国電力は7月、廃炉を決めた島根原発1号機(松江市鹿島町)の廃止措置計画を原子力規制委員会に申請。県、松江市も申請に同意した。中電が再稼働を目指す同原発2号機は、規制委の審査終了が見通せない状況が続いている。

 5月には邑南町の県道で落石による死亡事故が発生。中山間地域の交通に潜む危険が浮き彫りになった。(秋吉正哉)

鳥取県

中部地震 対応追われる

 倉吉市など県中部で最大震度6弱を観測する地震が10月21日に発生した。2000年の県西部地震以来の大規模な災害対応に、県は追われた。

 住宅被害は計1万4500棟を超えた。県は、国の現行制度では支援対象から外れる、損壊率10%以上20%未満の一部損壊にも独自に30万円を限度に支援金を支給し、10%未満の被災世帯には5万~1万円を給付することを決めた。温泉旅館やホテルで宿泊キャンセルが相次ぐなど、観光への風評被害が深刻化。平井伸治知事は東京や大阪で、観光地や農水産物のPRキャンペーンに立った。

 20年東京五輪でのジャマイカ陸上選手団のキャンプ誘致を目指し、3月に同国のウエストモアランド県と姉妹都市提携を締結。9月には香港と米子空港(境港市)を結ぶ山陰で2路線目の国際定期便が就航し、海外とのつながりが広がった。(川崎崇史)

(2016年12月29日朝刊掲載)

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