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社説・コラム

『この人』 開業半世紀の映画館「横川シネマ」の灯を守る 溝口徹さん

雑食系銀幕 地域と歩む

 アジアや欧州、中南米映画の佳品、硬派のドキュメンタリー、若手監督の意欲作…。多彩な上映ラインアップから「雑食系ミニシアター」と自任する広島市西区の映画館、横川シネマの支配人を務める。1967年の開館から半世紀の歴史を将来へつなぐ。

 「戦後の興行史を体現するような館と思う」。映画がまだ娯楽の代表格だった時代、愛好家や学生向けの名画座としてオープン。70年代半ば、映画人気の退潮により成人映画館となった。99年、自身が支配人に就いた際に、今につながる「マイナーでも届ける価値のある映画」をかける館に切り替えた。

 「最初の3、4年は経営に苦しんだけど、間違ったことをやっているとは思わなかった」。複数のスクリーンで話題作をさらうシネマコンプレックスとは別の鉱脈を探り、目利きの観客と口コミに支えられて生き残ってきた。

 広島修道大の映画研究会で、8ミリ映画の制作に没頭。在学中から市内の映画館でアルバイトし、卒業後もレイトショーの編成などで深入りした。28歳の時、横川シネマの経営会社から支配人を任される。消極的には「これしかやったことがないから」、積極的には「自分の裁量でやれるから」続いたという。

 3年前、経営が横川商店街振興組合に移り、デジタル対応を含めた改装も果たした。今年は、地域と歩んだ歳月に思いをはせ、開館した67年公開の名作を順次上映する。15日からの第1弾は、アルジェリア独立戦争を描いた「アルジェの戦い」。「うちらしいチョイスかな」。住まいは同市中区。(道面雅量)

(2017年1月4日朝刊掲載)

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