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空母艦載機 厚木から岩国移転 「ことし後半」米軍発表

 在日米海軍司令部は5日、在日米軍再編に伴う米海兵隊岩国基地(岩国市)への米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機移転が「ことし後半に開始される予定」と発表した。日米両政府が2006年に合意したロードマップに基づき、段階的に進める。山口県の村岡嗣政知事と岩国市の福田良彦市長はともに、日本政府へ詳しい説明を求めていく考えを示した。

 艦載機は、米海軍横須賀基地(神奈川県)配備の原子力空母ロナルド・レーガンに搭載されている。日本政府は06年時点で計59機と説明しており、内訳はFA18戦闘攻撃機49機、EA6B電子戦機4機、E2C早期警戒機4機、C2輸送機2機だった。その後、FA18が全てエンジン出力の大きいスーパーホーネットとなるなど機種が替わっている上、機数も現在は60機以上になっているという。

 艦載機の移転について、山口県と岩国市は容認していない。村岡知事は県庁で「容認するには、地元が求めている安心安全対策と地域振興策を満たすことが条件となる。国には地元の理解を得ながら進めるよう強く求めたい」と強調。判断するに当たり「ことし後半」のスケジュールにこだわらない考えも示した。

 岸信夫外務副大臣(山口2区)は5日、新年のあいさつで訪れた県庁で、「基地周辺のできるだけ多くの住民にメリットがある地域振興策を実現したい。政府全体で取り組む課題だ」と述べた。防衛省が県だけに支払う交付金の拡充や制度の改善も進めるとした。

 在日米海軍は同時に、E2Cの後継機で、日本で初めて運用されるE2D5機を2月初旬から岩国基地へ配備すると表明した。米国から別の空母で運び、2~3カ月間訓練するという。福田市長は市役所で「機種更新に伴う運用の一環で、是非を判断することにはならない。プロペラ機なので騒音の面でも大きな影響はないだろう」と語った。(村田拓也、野田華奈子、松本恭治)

「計画ありき」反発や懸念 住民

 米海軍が海兵隊岩国基地への空母艦載機移転をことし後半に始める方針を5日に発表したのを受け、岩国基地や厚木基地の周辺住民からは「住民軽視」「騒音問題は解決しない」と反発や懸念の声が上がった。

 移転が完了すれば配備機が120機を超え、軍事的な拠点性がさらに高まる岩国基地。基地の機能強化に反対する「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の久米慶典顧問(60)は「移転する艦載機の構成や機数、運用などの正確な情報が伝えられていない。米海軍の計画ありきで、市民は置き去りだ」と憤る。

 騒音問題に頭を悩ませ続けてきた厚木基地の周辺住民も、歓迎ムードとは言い難い。第4次厚木基地騒音訴訟の原告団長金子豊貴男さん(66)は「岩国には寝に帰るだけ。空母が横須賀基地に配備されている限り騒音はなくならない」。同基地近くの中古車販売店で働く男性(78)は「商売相手が減ったら困る」と、移転に伴う米軍人と家族の転出の影響を懸念した。

(2017年1月6日朝刊掲載)

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