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社説・コラム

『想』 久保田夏菜 カンボジアが好き

 今月下旬から、カンボジアへ行ってきます。おしゃれ好きなあの女の子は、髪が伸びたかな? 弟思いのあの男の子は、ちゃんと勉強してるのかな? 気付けば、8度目の訪問です。

 でも私がカンボジアに行くと言うと、周りは「危ないのに」「何がいいの?」と8割がマイナスの言葉ばかり。確かに内戦が終結してから二十数年しかたっていないので、地雷や貧困などのイメージが強いのは分からないでもありません。ただ、そのイメージだけが独り歩きするのは寂しいと、私は思います。

 なぜなら、カンボジアの人がたくましく生きる姿を私はしっかりと見たから。地雷で両足を失った男性は言いました。「誰も恨んでいません、それが戦争だから。死ぬことも考えたけど、今は大きな農園を持ち家族と仲良く暮らしています」と。

 3人の子を持つ女性は言いました。「今1番欲しいものは、お米です。でも、分け合って食べれば大丈夫。子どもがいてくれて幸せです」

 日本語を学ぶ13歳の男の子は言いました。「日本語を勉強して通訳になりたい。そして、給料はお母さんに渡すんだ」と。

 今回訪れるのは、首都プノンペンにある「ひろしまハウス」という無料の教育支援施設です。ここは、1994年の広島アジア競技大会をきっかけに広島のNPO法人ひろしま・カンボジア市民交流会が建てました。貧しくて学校に行けない子どもたち約60人が通っています。夢を持って一生懸命学び、休憩時間は全力で遊ぶ。子どもたちの姿は、カンボジアも日本も、何ら変わりありません。

 私はカンボジアで多くの人に出会いました。気付けば、その人たちの笑顔を見たくて何度も足を運んでいます。カンボジアは、内戦の爪痕に苦しむだけの国ではありません。人を動かすほどの力を持った国なのです。

 自分が好きな人を、周りの人も好きになってくれたらうれしい―。それと同じ。カンボジアに興味を持つ人が増えることを願い、私は今、カンボジアのことを伝える活動をしています。(フリーアナウンサー)

(2017年1月20日朝刊掲載)

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