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被爆・復興の家族史 世界に発信 1年かけ英訳し出版

 広島市出身の経営コンサルタント岡村有人(くにと)さん(65)=東京都世田谷区=が、広島で被爆した両親の話を基に原爆投下後の惨状や家族の絆などをつづった著書「七つの川は銀河に届け」を1年がかりで自ら英訳し、米国の出版社から出版した。

 英語版は206ページ。日本語版と同様、家族の写真などをふんだんに盛り込んでいる。

 岡村さんの両親は爆心地から約1・6キロの昭和町(現中区)で被爆。生き地獄の市街地を逃れて広島湾沖の似島で過ごした。戦後に結婚し、毎年8月6日の前夜になると子どもたちに原爆の体験談を生々しく語った。

 「七つの川は銀河に届け」は、そうした話に加え、広島を復興させた勇気ある人々や手づくりの家から復活していった家族のことなどを、復興期の広島の心象を交えて著し、原爆投下から60年になる2005年に出版。その当時から、海外の人々にも読んでほしいと思っていた、という。

 英訳できたのは、母方の親戚で戦後間もなく渡米した加納倫雄さんの妻シャーロットさんの後押しのおかげ。翻訳を強く勧め、訳文をチェック、出版社も見つけてくれた。

 英訳は、英国の帝国戦争博物館(IWM)のアーカイブにも登録された。草稿を送ったかつての上司の英国人が、IWMに持ち込んでくれたのがきっかけとなったという。

 岡村さんは「ヒロシマの家族や人々が苦労しながらも夢と希望を持って、いかに復興してきたかを英語で発信できることになりうれしい。必ず海外の人にも伝わると思う」と話している。岡村さんの会社KRTが日英版とも1冊1500円で扱っている。Tel03(5355)6801。メールアドレスkrt@r8.dion.ne.jp(宮崎智三)

(2012年7月30日朝刊掲載)

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