連載・特集

[Peaceあすへのバトン] 木工作家・竹部徳真さん 命感じる造形 心照らす

 昨年5月27日、山口市にある工房で、固唾(かたず)をのみながらラジオの実況に耳を傾けました。米国のオバマ大統領が現職として初めて広島を訪問した日。平和のあり方が変わるのでは―。そんな期待を抱いたのは、大統領が被爆地に実際に立ち、あの惨禍を知ろうと行動に移したからでした。

 オバマ氏が残した折り鶴を、自分は「平和を祈る象徴」と受け止めました。何か表現できないか、それが自分にとっての「行動」でした。銀で細工した五つの小さな鶴を、木目の映えるランプシェードに取り付けました。素材は山口県産のアカマツ。点灯すると鶴が回転し、影が木目に映り込む作品です。優雅に舞う折り鶴を表しました。

 作品を、今回の訪問の立役者だと思ったケネディ駐日米大使に昨年12月、贈りました。感謝の気持ちを伝えたかったから。年明けに届いた手紙には「飾って楽しみます」というメッセージが。思いが結ばれたことが、アーティストとしての再出発になりました。

 ものづくりが好きです。小学生の時、写真や図鑑を見ながら厚紙を切って貼り合わせ、城の模型を1カ月かけて作ったことも。大学では樹脂や金属、紙などあらゆる製品を対象にしたデザイナーになるつもりでした。しかし就職試験で挫折。悩み、「生」について考えたのが作家活動のテーマになっています。

 木目の浮き上がる明かりを考え付いたのは、失敗がきっかけです。アカマツで薄い平皿を作った時、削り過ぎて割ってしまったのです。破片を拾うと、向こうから差し込む光に木目が透けて見えました。冬を越すごとに増える年輪。木は切られて死んでも、生きた時間を視覚化し、見る人と共有できると発見しました。

 同じように、亡くなった人に思いをはせることは、平和につながる根源だと考えています。昨年8月、原爆ドームそばの西蓮寺で、仲間と開いた祈りの集いがその試みです。本堂でパイプオルガンの演奏、音色により光量が変わるアカマツの明かり、読経を組み合わせ、参加者が原爆の悲劇を想像する空間を演出しました。「あの日を思い出したくない」という被爆者と、前に進もうとする次世代。両方をつなごうと工夫しました。

 一見、別々に存在するように見えるものを、同じ方向にまとめることが、平和への道筋だと思います。見る人の心の中に平和の明かりをともし、周囲の人も照らす、そんな作品を生み出そうと目指しています。(文・山本祐司、写真・天畠智則)

たけべ・とくま
 兵庫県姫路市出身。母の古里にある山口県立大に進み、同大大学院修了。12年6月から1年間、広島市内の画廊に勤めながら芸術を学ぶ。木工作家としてデビューして15年2月、「やまぐち新進アーティスト大賞」受賞。山口市在住。

(2017年3月13日朝刊掲載)
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