連載・特集

緑地帯 まち物語の復興力 福本英伸 <8>

 3月中旬から月末にかけ、福島の被災者とフランスを巡る。アニメーション「浪江町消防団物語 無念」の上映会のためだが、もう一つ目的がある。リヨンなどで開く紙芝居の講習会だ。私なりに紙芝居の魅力をまとめてみよう。

 第1はコストの安さ。アニメや絵本と比べ、何十分、何百分の一で済む。このことは物語の伝承に当たり、大きな武器だ。福島の原発事故について人々の口は重いが、私は「10年後、20年後に読んでもらうため、今作っておきましょう」と説得した。アニメや刊行物ではこうはいかない。

 次に、原稿が上演者の手元にとどまり、可変性があること。「東北まち物語紙芝居化100本プロジェクト」で、1週間に1本のペースで紙芝居を届けるのに、事実関係の確認に万全を期すことはできなかった。苦肉の策として「多少の違いは自分で直してください」とお願いした。回数を重ねる中で精査され、完成形に近づけばいいのだ。

 3番目は、誰でも読み手となれる手軽さ。せりふを覚えるのと違い、原稿を読んでいい。恥ずかしければ絵の裏に隠れてもいい。

 それでいて奥行きは深い。素人でも場数を踏めば、見る人の涙を誘うこともしばしばだ。そこまでになれば、伝承を超え、生きがいにつながる。福島では何人もの被災者が、震災の紙芝居を読むことを生きがいとしている。

 われわれの渡仏をきっかけに、フランスにも紙芝居グループができる。紙芝居を世界に! 定年後の楽しみとしてはこの上ない。(まち物語制作委員会事務局長=広島市)=おわり

(2017年3月15日朝刊掲載)
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