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惨状伝える「新着」98点 焼け焦げた腕時計/折れた印鑑… 広島の原爆資料館

 広島市中区の原爆資料館に2015年度寄贈された被爆資料などを紹介する「新着資料展」が16日、同館東館で始まった。腕時計や衣服、弁当箱など、被爆者や遺族が保管してきた98点が原爆被害の惨状を伝える。無料。11月30日まで。

 針が飛び、焼け焦げた腕時計。「吉岡」という文字が読める折れた印鑑。割れた眼鏡のレンズ―。持ち主で県警察部国民動員課に勤めていた吉岡正二さん=当時(31)=はあの日、可部町(現安佐北区)の自宅から市内に向かったまま帰らぬ人となった。

 行方を捜していた親族が1週間後、吉岡さんが出勤前に立ち寄ったとみられる堺町(現中区)の病院跡でこれらの遺品と遺骨を見つけたという。寄贈した吉岡さんの長女、有井正子さん(71)=安佐北区=は、「原爆の悲惨さを世界中の人に見て知ってもらうことが供養になると考えた」と語る。

 資料館によると、15年度は被爆70年の節目で、14年度の約4倍の857点が寄せられた。(野田華奈子)

(2017年3月17日朝刊掲載)

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