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核なき世界への鍵 初交渉から <中> 条約像 幅広い禁止 合意急ぐ

 「ほぼ期待通り。エキサイティングな議論が進んでいるわ」。米ニューヨークの国連本部で開かれていた「核兵器禁止条約」の制定交渉会議4日目の3月30日。米国で反核運動を続けるレイ・アチェソンさん(34)は専門家として会議で意見を述べた後、満足そうに振り返った。

 国際的な女性団体の軍縮部門「リーチング・クリティカル・ウィル」(RCW、本部ニューヨーク)の中心メンバーだ。条約推進国のメキシコやオーストリアと連携。核兵器に関する行為を広く対象にした「禁止先行条約」の考え方を冊子にまとめ、会議前に関係国に説明した。RCWは5日間の会期中、前日の議論の要点をまとめた資料を会場入りする各国の大使たちに配り議論を下支えした。

 核兵器の保有国が参加せず、非保有国主導で進んだ初回の交渉会議。RCWの整理では、各国は「核兵器の使用、備蓄(保有)、開発、生産、取得、配備とこれらへの援助、奨励、勧誘」の禁止はほぼ合意。米ロ英仏中を保有国と認める核拡散防止条約(NPT)とは違った、差別なき保有禁止を求める声が相次いだ。

 アチェソンさんは7年前、広島市の原爆資料館を訪れ、非人道的な被害に触れた。冊子の表紙には「原爆の日」の灯籠流しの写真を載せた。「廃絶を訴えてきた被爆者の頑張りに突き動かされている」と話す。

 会議ではRCWが提案した禁止対象の中で、条約であえて項目を規定するかどうか意見が割れた点もあった。「『実験』は開発の禁止に全て含められる」(アイルランド)「『出資』は援助の禁止で適用できる」(オーストリア)…。各国は条約を極力簡素にし、合意を急ぐ傾向にある。そこに会議に不参加の米国の存在がちらつく。

 トランプ大統領は核戦力増強に意欲を表明。米政権が会議参加国の切り崩しを進めるとの警戒感がある。分担金削減などで国連でのさまざまな議論を締め付ける可能性も指摘される。条約推進国は早く国際規範をまとめ、軍縮に逆行する動きに先手を打ちたい考えだ。

 スイスなどは時間をかけて条約作りを進めるよう求めたが、出席した115カ国以上の中で少数派。ホワイト議長は次回会期(6月15日~7月7日)での成案採択を目指す。ただ第1回会期では、保有国をどう巻き込むかという、焦点の一つを詰め切れなかった。

 条約に加盟するには、廃棄を終えている必要はない―。オーストリアは、保有国が備蓄核兵器の廃棄計画を時間枠を含めて詳細に定めれば、加盟を認める案を示した。廃棄完了を条件とする主張もある中、ハードルを下げた形だ。さらに具体化し、合意できるかが問われる。

 米国の核に安全保障を頼る北大西洋条約機構(NATO)から唯一参加したオランダは「禁止がNATOの義務と矛盾してはならない」と譲らなかった。一方で「禁止の考えは支持でき、議論を深めたい」とも言う。核に頼る「当事者」から近い将来の加盟を促す糸口をどう引き出すかも、実効性を高めるポイントとなる。

(2017年4月7日朝刊掲載)
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