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連載・特集

[Peaceあすへのバトン] 広島経済大3年・谷川飛馬さん 復興願いカンボジアへ

 カンボジアの子どもに夢と希望を持ってもらいたいと、願っています。広島経済大(広島市安佐南区)の学生で企画するカンボジア国際交流プロジェクトのリーダーを務めています。内戦からの復興を後押しするため、現地に行って教育を手助けするボランティアに仲間と取り組んでいます。

 ポル・ポト派が政権を握った1970年代後半、カンボジアでは多くの知識人が虐殺されました。その結果、教員が不足して教育レベルの低下を招き、いま専門の教員を育てることが求められています。

 復興へ進む現状は被爆後のヒロシマと似ています。人々が歩んだ道のりや平和を願う気持ちは、私たち広島の若者でも伝えられるのでは―。プロジェクトで作った小学校低学年向けの副読本をことし3月、通訳の協力でクメール語に訳し、現地で配って授業をしました。

 復興した広島の街や日本の学校教育、生活などをまとめています。私は手洗いやうがいの仕方を教えました。水が汚れ、山積みのごみが放置されるなど、病気になりやすい環境に子どもは囲まれています。なぜ手洗いが必要かを説明した後、実践に移ります。

 広島のように過去を学ぶ平和学習をする方法もありますが、国全体で内戦時代の「負の歴史」から目を背ける雰囲気があり、現実的ではありません。自分たちにできることは、国が疲弊し先進国との間に生まれた差を縮めるため、日本の戦後から現在までを伝えることだと考えています。

 今回、うれしい変化がありました。1年ぶりに訪れた小学校のクラスで、児童が率先して手を洗ってくれたのです。習慣づいた光景を見て泣いてしまったメンバーも。ただ、副読本について「文字が多い」「内容が難しい」などの指摘もあり、今後は教員向けに使い方を紹介するテキストを作れないか考えています。

 国際交流に興味を持ったのは高校2年の時。紛争で傷ついた子どもを支援する非政府組織「ドイツ国際平和村」を紹介するテレビ番組を見たことがきっかけです。広島で暮らす自分も何かできないか考え、大学に入ったら海外に行って活動する目標を立てました。

 もともと人前で話すことを避けるほど内向的でした。自分も「変えなきゃ」と思っていましたが、プロジェクトに加わり報告を重ねたことで、自信が持てるように。多くの温かい人と出会えたのが貴重な経験です。次は自分が人と人をつなぐ仕事に就こうと目指しています。(文・山本祐司、写真・井上貴博)

たにがわ・ひゅうま
 福山市生まれ。幼少期に広島市へ移り、瀬戸内高を卒業。広島経済大に入学後、カンボジア国際交流プロジェクトに参加し、これまで計4回(毎年3、8月)現地に渡る。昨年12月からリーダー。安佐南区在住。

(2017年4月11日朝刊掲載)

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