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福山の新荘さん ベラルーシの子どもに絵本送付 現地からヒロシマの絵届く

 原爆の被害を伝える日本の絵本を読み、感想を絵で表現したベラルーシの子ども37人の作品が日本に届いた。福山市の新荘裕之さん(55)が2015年9月に同国を旅したことが端緒となった。海の向こうからの思いがけない反響に、絵本の著者たちも喜んでいる。(金崎由美)

 新荘さんは1986年のチェルノブイリ原発事故で最も深刻な影響を受けたベラルーシの現状に関心を持ち、首都ミンスク市などを旅行。市立の子ども図書館に事務局を置く交流団体の「日本文化情報センター」も訪ねた。「ヒロシマのことも知ってほしい」と帰国後、ロシア語版がある絵本を入手して送った。

 一つは白血病からの回復の願いを折り鶴に託し、12歳で亡くなった佐々木禎子さんにまつわるストーリー「おりづるの旅 さだこの祈りをのせて」(うみのしほ作)。もう一つは東京都稲城市の主婦宇留賀佳代子さん(55)が、母から聞いた呉空襲や広島での入市被爆の体験をつづって自費出版した「ピンク色の雲 おばあちゃんのヒロシマ」。

 センターからミンスクの絵画教室に持ち込まれ、7~15歳が絵筆を握ったという。2月に新荘さんの元に届けられた。「豊かな個性と日本とひと味違う平和観が感じられる」。作品のタイトルも興味深く、虹色のスカートをはいた子を描く8歳女児の作品は「私たちは地球の平和に対する責任がある」。9歳児の原爆投下機の絵は「悲しみを運ぶ飛行機」。きのこ雲の下の人間を細かな線で描いた鉛筆画は「罪なき犠牲」と添えられていた。

 実物とカラーコピーを著者に送った。「核兵器を持ち続ける米国とロシアに問い掛けたい」と英語版とロシア語版も作った宇留賀さんは「原爆を知らない子たちの心にも平和への願いは伝わった」と喜ぶ。「稲城 平和を語り継ぐ三世代の会」の代表として毎年8月に平和の集いや展示会を開いており、「今年はこの絵の展示を」と話す。

 「おりづるの旅」は広島市中区のNPO法人、ANT―Hiroshimaが多言語への翻訳を進めてきた。やはり絵を展示する機会を検討している。

(2017年4月17日朝刊掲載)

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