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被爆67年 ヒロシマ伝える決意 トルーマン元米大統領の孫

 原爆投下当時の米国大統領トルーマンの孫で、作家のクリフトン・トルーマン・ダニエルさん(55)=米シカゴ市=が、平和記念式典に初めて参列し、奪われた命を悼んだ。帰国後、被爆地を訪れた体験をまとめ、伝え広める決意を固めた。

 平和の鐘の音が響いた午前8時15分、顎を引き、目を閉じた。隣には、広島と長崎両方の原爆投下機に乗った唯一の米兵の孫アリ・ビーザーさん(24)=米ロサンゼルス市。黙とう中、2人はずっと手をつないでいた。

 式後、「多くの魂が奪われ、美しかったであろう街並みが消えたことを体感した」とダニエルさん。午後からは広島女学院高(中区)での行事に参加。日本、米国、韓国の若者約90人に「核兵器は二度と使われてはならない。平和な世界を目指し、ともに努力しよう」と呼び掛けた。

 祖父は原爆投下の是非を語らなかった。そして孫は学生時代、関連書物から国による受け止めの違いを知る。「私にも是非の判断はできない。だが、祖父は後に原爆の破壊力を知り、恐怖に駆られていたと聞く。悔いていたと思う」

 12年前、佐々木禎子さんの物語を読んだ。被爆し、折り鶴に願いを託しながら生涯を閉じた12歳に心を痛めた。それが兄雅弘さん(71)=福岡県=に伝わり、2年前に訪日の打診があった。「被爆者の怒りは甘んじて受けよう。実態を知り書き残す責任がある」と決断した。

 来日した3日以降、被爆者約20人の証言を聞いた。その1人から平和記念公園(中区)で育つ被爆アオギリの種を受け取った。友好の証しとして、祖父が米ミズーリ州に建てたトルーマン図書館の庭に植える。墓前にはこう報告するつもりだ。「核兵器は存在してはならない」と。9日、長崎市の平和祈念式典に参列する。(門脇正樹)

(2012年8月7日朝刊掲載)

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