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変わる岩国基地 どうみる艦載機移転 <4> 第4次厚木基地爆音訴訟原告団長 金子豊貴男氏

騒音予測図は机上の論理

  ―米海兵隊岩国基地(岩国市)へ移転計画がある空母艦載機は現在、米海軍厚木基地(神奈川県)に配備されています。艦載機の訓練や騒音の実態は。
 空母は米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)を母港とし、艦載機を搭載して洋上に展開する。メンテナンスや休暇で横須賀に寄港中、艦載機は厚木基地を拠点に訓練などで離着陸や飛行を繰り返す。統計的にみると、艦載機の厚木滞在は年間8カ月程度に及ぶ。

 空母の出港前、艦載機は硫黄島(東京)で陸上空母離着陸訓練(FCLP)をする。それに向けた事前訓練も激しく、基地周辺の騒音は悪化する。島の滑走路を空母の甲板に見立てたFCLPに続くのが、実際に空母を使った着艦資格取得訓練(CQ)だ。真夜中に基地を離着陸し、住民の安眠を妨げる。

  ―岩国移転により、厚木基地周辺の騒音軽減は期待できますか。
 期待できないと思う。艦載機の寝床を用意したとしても、岩国周辺の訓練空域は十分ではない。国は訓練空域を設けたと言うが、あくまで臨時で暫定的。厚木に行き、慣れた空域で訓練するだろう。CQも引き続き厚木を経由して実施される見通しで、厚木の米軍住宅が減るという話も聞かない。艦載機の基地が二つになるだけではないか。

  ―国は、艦載機移転後の岩国基地周辺の騒音予測図を更新しました。どう評価しますか。
 私は全くでたらめだとみている。予測では航空機が陸上の手前でターンし、瀬戸内海の岩国沖合だけで絵を描いている印象だ。机上の論理であり、現実にはあり得ないだろう。

  ―艦載機の騒音を考える上で、何に注目すべきでしょうか。
 飛行や離着陸の実態が重要だ。例えば4機で飛来した場合、1機ずつ基地に降りるためには上空待機が必要となり、必然的に旋回数は増えていく。音の継続時間によっても被害の捉え方は変わる。そうした点も踏まえて調査し、議論しなければ。住民が粘り強く声を上げ続けることが、騒音問題の解決につながると信じている。(聞き手は松本恭治)

かねこ・ときお
 東京都世田谷区出身。10歳から相模原市で暮らす。明治大文学部を卒業後、厚木基地周辺の騒音問題に取り組む。1991年、相模原市議に初当選し、現在7期目。全国基地爆音訴訟原告団連絡会議代表、基地監視団体リムピース共同代表。

艦載機移転後の岩国基地周辺の騒音予測
 日米両政府が移転計画に合意した2006年当時から機数や機種が変わったため、国が今年1月に更新。住宅防音工事の助成対象区域(第一種区域)が、滑走路沖合移設前だった06年当時の約1600ヘクタールから約650ヘクタールに縮小するなどとした。一方、市民団体には「米軍機の飛行実態に即していない」として予測を疑問視する声もある。

(2017年5月9日朝刊掲載)

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