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連載・特集

変わる岩国基地 どうみる艦載機移転 <5> 元米海兵隊政務外交部次長 ロバート・エルドリッヂ氏

情報提供 市民の不安解消

  ―米海兵隊岩国基地(岩国市)への艦載機移転計画を巡り、国や山口県、市には何が求められますか。
 情報の透明性だ。日米同盟は広く国民に支持されているが、より重要なのは理解されることだ。説明責任を果たしてこそ幅広い理解につながる。国と自治体の間でも同じことが言える。10年ほど前、移転計画を巡り国と市の関係が崩れた。国の説明不足が背景にあったと私は思う。

  ―市民には、移転後の米軍機の事故リスクが高まることなどを懸念する声もあります。
 絶対に安全という保証はあり得ないが、米軍は最大の配慮と最新の技術、最高の教育の下で運用する。沖縄在任中、私はあえて普天間基地(沖縄県宜野湾市)近くで暮らしたが、事故の心配はしていなかった。いかに運用体制が整っているかを知っていたからだ。市民の不安解消には可能な限り早く、多くの情報を提供することが重要。国や米軍の誠意が問われる。

  ―政務外交部の次長時代には、どんなことに取り組みましたか。
 基地の透明性の向上を目指した。日本中の学生向けのインターン制度をつくったり、見学会を爆発的に増やしたりした。小学生から年配の人まで、誰でも来られるようにした。平日の昼間だけではない。夜間や週末、祝日も自ら時間をつくって案内した。

 岩国には岩国のやり方があると思うが、私は「透明性がないと理解されない。理解が得られないとそこにいられない」という考えを大事にした。物理的にフェンスはあるが、それが存在しないような外部との関係づくりに尽くした。

  ―東日本大震災で被災地を救援する「トモダチ作戦」も立案されました。基地の活用に提言は。
 基地の存在を、政争の具や国から金を引き出す材料にするのではなく、経済交流や国際交流に生かす発想を大切にするべきだ。私は次長時代、被災地の子どもを沖縄に招く活動にも力を入れた。将来を担う人材育成につながる取り組みを進めてほしい。(聞き手は松本恭治)=おわり

ロバート・エルドリッヂ
 米国出身で、1990年に来日。神戸大で五百旗頭真教授(後に防衛大学校長)の研究室に所属し、政治学の博士号を取得。2009~15年、沖縄駐留の米海兵隊政務外交部次長を務めた。日米関係の深化の調査、提言などをするエルドリッヂ研究所代表。

(2017年5月10日朝刊掲載)

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