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辺野古反対どう考慮 沖縄訪問の岩国市長「移設見通し立った」発言 

 米海兵隊岩国基地(岩国市)へ7月以降、空母艦載機61機が移転する計画を巡り、福田良彦市長は、受け入れの前提条件とする米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設見通しについて「見通しは立った」と表明した。沖縄を今月訪問し、政府が移設先とする名護市辺野古沖の埋め立て状況を視察した結果などから判断したという。一方、現地の根強い反対意見をどう考慮したのか、市長の見解を疑問視する声もある。(松本恭治)

 17日、岩国市役所。「客観的に状況を判断すると、見通しは立っている」。福田市長は報道陣から普天間移設の見通しを問われ、そう答えた。14~16日の沖縄訪問中、同じ質問を繰り返し受けても明言を避けていただけに、急転の表明は報道陣を驚かせた。

 発言には伏線があった。直前に開かれた地域振興策などを巡る国側との会談。福田市長は移設に向けた国の姿勢をただし、宮沢博行防衛政務官から「関係法令に基づいて住民の生活や自然環境に最大限配慮し、工事を進めたい。普天間飛行場の移設に全力で取り組む」との言質を引き出していた。

 「現場主義」―。福田市長は沖縄訪問中、この言葉を繰り返した。沖縄防衛局から県内の基地問題などの説明を受け、埋め立て工事の状況を視察した時点で事実上、「見通しは立った」との感触を得たとみられる。一方、移設に反対する意見や背景に触れる場面はほとんど見られなかった。

ソフト事業中心

 15日、名護市役所の市長室。福田市長は、辺野古移設に反対する稲嶺進市長との会談に臨んだ。約30分間の非公開の意見交換はしかし、英語教育や地域交流などのソフト事業の話題が中心だったという。

 会談について、福田市長は「非常に有意義な内容だった」と強調した。移設問題にあまり触れなかったのは「稲嶺市長のスタンスは承知しており、時間も限られていた」と説明。辺野古視察前の「表敬訪問」だったとした。

 一方、稲嶺市長は会談後の取材に「移設の進捗(しんちょく)や名護市としての対策を説明しようと思っていた。何をしに来られたのか」と首をかしげ、認識は食い違った。移設の進捗は「全く進んでいない状況だ」と言い切った。

 16日にあった宜野湾市役所での佐喜真淳市長との会談は対照的だった。佐喜真市長は福田市長を笑顔で迎え、握手を交わした。非公開の会談後、福田市長は「普天間飛行場の危険性除去、一日も早い移転で意見が一致した」と晴れやかな表情で語った。佐喜真市長は昨年1月の市長選で、辺野古移設を推進する安倍政権の支援を受けて再選している。

 福田市長が沖縄訪問中の15日は、沖縄県の本土復帰から45年の節目だった。辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前ではこの日も、移設反対派が抗議活動を展開。福岡県から参加を続ける沖縄出身の仲村渠(なかんだかり)政彦さん(68)は「本土復帰で平和な沖縄を望んだが、現状は真逆だ。『軍事植民地』化の一環で辺野古の基地建設がある」と力を込めた。

知事面会求めず

 沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事は、あらゆる手段で辺野古での「新基地建設」を阻止すると訴えている。ただ福田市長は今回、翁長知事との面会までは求めなかった。

 岩国市の市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」は「地元自治体や住民の意向を十分に確認せず、見通しが立ったと判断したなら手続き的に問題がある。沖縄視察は移転容認に向けたアリバイづくりではないか」と指摘する。

(2017年5月21日朝刊掲載)

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