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消える8・6登校日 広島市立小中 休日条例を適用

 広島市立の小中学校の半数以上が平和学習を目的に設定していた広島原爆の日(8月6日)の登校日が、ことしからなくなる見通しであることが10日、分かった。地方分権の一環で教職員の人事権限が丸ごと市へ移り、市職員向けの8月6日を休日とする条例が適用されるためだ。市教委は「平和教育が後退するわけではない」とするものの、学校からは戸惑いの声も上がっている。(馬場洋太)

 8月6日は夏休み期間中だが、市教委によると、昨年度は市立小141校のうち82校(58・2%)、市立中63校のうち32校(50・8%)が登校日として平和学習をした。ことしの予定は「まだ把握していない」とするが、日曜日に当たることもあり、登校日にする学校はなくなるとみている。

 西区のある小学校は、8・6当日に開いていた平和学習を7月に前倒しする。校長は「テレビで平和記念式典を見ながら全員で黙とうし、校長として地域の被害などを児童に語ってきた。当日だからこそ心に響く面もあったはず」と案じる。中区の小学校長も「定着していただけに残念。学校は条例の例外とできないのか」と首をかしげる。

 政令指定都市の広島市ではこれまで、小中学校の教職員の異動や懲戒などの人事権は市教委、給与の負担や定数の決定は広島県教委と、それぞれ分かれていた。地方分権の一環で4月から、すべてを市教委が担う仕組みに移行した。

 3月に退任した尾形完治前広島市教育長によると、市教委は当初、小中学校の教職員は条例の適用外とできないか、市と協議したという。だが「市立の幼稚園や高校の教職員は、すでに休日となっている。例外をつくるのは難しい」との結論に至ったという。

 市教委は「地域の原爆関連の行事との兼ね合いなどで、8・6を登校日としていなかった学校もある。平和教育を小中高で系統立てて進める方針は変わらず、影響はない」とする。市小学校長会長で、中区の神崎小の高西実校長は「8月6日だけに平和学習をするわけではない。条例に沿った中で工夫すればいい」と語る。

 市教委は2004年度から、8・6の時期に集いを開くよう、小中学校へ促してきた。00年の調査で、原爆投下の年月日と時刻を正しく答えた小学生が35%にとどまったのを踏まえた。長崎市教委は1971年度から、全小中高で長崎原爆の日(8月9日)を登校日としている。

8月6日を休日とする条例
 広島市は1947年に制定した条例で、原爆が投下された8月6日を「平和記念日」として、市独自の休日とした。市機関の執務は「原則として行わない」と規定しており、市役所などは閉庁となる。原爆犠牲者の慰霊や恒久平和を祈る日としての意義を広く伝える▽多くの市職員にとって被爆死した身内の命日である▽平和記念式典の運営態勢をつくる―などを主な理由としている。

(2017年6月11日朝刊掲載)

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