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被爆樹木の輪 119都市 首長会議から贈呈 5年 検疫に時間 伸び悩む

 平和首長会議(会長・松井一実広島市長)が「被爆樹木2世」の種や苗木を加盟都市などに贈り始め、丸5年になった。核兵器廃絶の世論を広げる狙いで、これまでに日本国内と海外15カ国の計119都市に植えられた。加盟都市に送るメールマガジンなどで希望都市を募るが、現物の輸送や育成に手間がかかる上に周知不足もあって、本格的な普及はこれからだ。(桑島美帆)

 首長会議の副会長都市で第1次世界大戦で化学兵器が初めて本格使用されたベルギー・イーペル市が2012年5月の贈呈第1号。翌年には5カ年の行動計画にも記され、欧米など33都市に被爆したイチョウやクスノキ、エノキなどから生まれたものを贈ってきた。欧州が多く、内戦を乗り越えたボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボなども含まれている。

 平和教育やイベントに活用する都市もある。街ぐるみで平和発信に力を入れるイタリア北東部のチェルビア市は被爆70年に合わせ、市内の公園に被爆イチョウの子孫の苗木を植えた。近くの小学校の子どもたちが世話をしながら平和の大切さを学ぶ。ルカ・コッファーリ市長は「自由や民主主義を大切にし、平和は人々の基本的な権利とする、わが街の象徴」とするコメントを中国新聞に寄せた。

 日本国内では今月、市庁舎そばに「被爆アオギリ2世」が植樹された東京都国立市を加え、86の加盟自治体にアオギリを中心にした子孫が広がっている。

 行動計画では目標数などは定めていないが、現時点で日本を含めて加盟する162カ国7355都市(6月1日現在)の1・6%。特に海外が伸び悩む背景には、植物の輸出が国によって規制が異なり、手続きや検疫に時間がかかることがある。最近は海外へは種子を送る場合がほとんどという。さらに現地で植える場所や手入れをする人材も必要となる。

 首長会議はこの事業で、被爆樹木の保存と普及などに取り組む広島市中区の民間団体グリーン・レガシー・ヒロシマ・イニシアティブ(GLH)と連携する。爆心地から半径2キロ圏内で生き残った樹木の種はGLHが採取し、メンバーである樹木医堀口力さん(72)=西区=が市植物公園とともに苗木や種を管理する。

 堀口さんは「被爆者が高齢化する中、被爆樹木の価値はさらに高まる。二度と悲惨な経験を繰り返してはならないというメッセージを樹木を通し、もっと世界に広めるべきだ」と話す。首長会議がかける予算は年間で76万円。母体である広島市のさらなる後押しを望む声もある。

(2017年6月19日朝刊掲載)
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