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NGO後押し クラスター弾全面禁止条約実現

 ノルウェーの首都オスロで3日、署名式にこぎ着けたクラスター(集束)弾の即時全面禁止条約は、地道な被害者支援や不発弾処理作業を展開する非政府組織(NGO)が後押しした、市民社会主導型の人道・軍縮条約だ。1999年発効の対人地雷禁止条約(オタワ条約)に続くNGO運動の成果だが、米中ロなど〝クラスター弾大国〟の不参加など乗り越えるべき課題は多い。

 中心となった国際NGO、クラスター弾連合(CMC)は、今年のノーベル平和賞候補と目されたほど。ノルウェー外務省のコングスタッド安全保障政策局長はNGOの役割について「現場での生の経験と専門知識を提供し、被害者の声を吸い上げることで条約交渉の信頼性を高めた」と評価する。

 交渉の過程でCMCなどは、クラスター弾を製造する軍需企業が主張する不発弾発生率の低さは信頼できないと激しく非難。現場の土壌などによって実戦での不発率が大きく上回ることをデータを示しながら説明した。不発率の高低によって使えるクラスター弾とそうでないものを分ける、西欧諸国や日本が当初唱えた部分禁止論を退け、より強力な即時全面禁止に道を開く大きなきっかけになった。

 こうした活動には「会議室で交渉だけやる外交官には反論できない重みがあった」と、交渉関係者が振り返る。

 「人道問題の解決」を掲げて突き進んできたNGOや有志国に対し「軍事的有用性と人道のバランスが必要」という論法で立ちふさがるのが米国、中国、ロシア、イスラエルといったクラスター弾の主な保有、使用国。こうした国々が参加していないという事実は、やはりこの条約の最大の弱点だ。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチの集計ではクラスター弾保有77カ国のうち、条約に参加したのは37カ国。使用歴のある14カ国のうち参加は7カ国。数の上ではほぼ半数が条約に参加するが、過去の使用頻度からすれば圧倒的な米国やロシアの不在はいかにも大きい。

 自国周辺に紛争の火種を抱え、クラスター弾に頼らざるを得ない事情からグルジア、韓国、タイといった国々が条約不参加を貫いている。今夏のグルジア紛争では実際、グルジア、ロシア双方がクラスター弾を使用したとされる。

 将来、軍事大国の中から条約に参加する国が現れるかどうか。国際協調路線への転換が期待されるオバマ次期米政権の対応に関係者は注目する。

 オタワ条約を主導、ノーベル平和賞を受賞したジョディ・ウィリアムズさんは2日、オバマ次期大統領に対し「あなたの言う『変革』や『希望』は単なる言葉にすぎない。われわれは行動を望む」と署名決断を迫った。

 オバマ氏は大統領選期間中、クラスター弾問題に正面から発言したことはない。2006年9月、民間人居住地域でのクラスター弾使用を禁じる国防歳出法案の修正条項には上院議員として賛成したが、次期国務長官のヒラリー・クリントン上院議員やバイデン次期副大統領は反対票を投じており、次期政権のクラスター弾政策は不透明だ。

(共同通信2008年12月3日配信、12月4日朝刊掲載)

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