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アートが問う 核・戦争 岡部さん・港さん 広島で合同展

 ヒロシマを題材に創作を続ける美術家岡部昌生さん(北海道北広島市)と、多摩美術大教授で写真家の港千尋さんの合同展「色は憶(おぼ)えている」が広島市中区上八丁堀のギャラリーGで開催されている。東日本大震災の被災地をテーマにした新作を通じて、核や戦争の脅威と向き合う美術の役割を問い掛ける。

 岡部さんの新作「3つの・都市の・事後の・イメージ」は、縦38センチ、横55センチのフレームを計76点並べ、ギャラリーの壁を覆う巨大な展示。被爆遺構の旧宇品駅プラットホームを擦り取ったフロッタージュと、内戦で破壊されたレバノンの首都ベイルートの土を紙に流した作品を組み合わせた。

 フロッタージュの1点だけが、黒い紙で覆われているのが目を引く。ヒロシマの痕跡の上に、繰り返された核の悲劇を暗示するかのよう。「福島第1原発事故という内側から脅威に曝(さら)された、3・11後の日本の今を表現した」と岡部さんは語る。

 港さんは大震災後間もなく撮影した「福島シリーズ」7点を展示。無人となった飯舘村に咲き誇るケシの花を捉えた1枚は、人知を超える自然の美と力を感じさせる。

 最終日の9月2日午後3時から、岡部さんと港さんによるトークイベントがある。(西村文)

(2012年8月31日朝刊掲載)

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