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[「9条加憲」を考える 中国地方の国会議員に聞く] 民進党 森本真治氏(参院広島)

歯止め外れる危険性も

  ―被爆地である広島市の市議でした。憲法9条にどんな思いがありますか。
 9条は憲法の平和主義を象徴する条文だ。戦後、日本が国際社会の中で平和国家として認知されたのも9条の役割が大きかった。変える必要はない。そう考えるのは、私自身が被爆地・広島市出身であることも影響しているかもしれない。

  ―安倍晋三首相は、9条1項、2項を維持した上で自衛隊の存在を明記する案を提起しました。
 私は、今の9条によって自衛隊の武力行使に歯止めがかかってきた部分があると思う。書き方にもよるが、明記することで、その歯止めが外れる危険性は否定できない。

 自民党は2012年にまとめた改憲草案で国防軍創設を打ち出した。また、与党はこれまでの憲法解釈を変更し、15年に成立させた安全保障関連法で、集団的自衛権の行使を可能にした。こうした動きを見ると、武力行使の範囲拡大につながる可能性がないとは言い切れない。

  ―自衛隊は現状、戦力不保持を定めた9条2項と矛盾しているとの指摘もあります。
 安倍首相も今後、「だから加憲が必要だ」と説明するのかもしれない。だが、本当にそれだけなのか。不信感が拭えない。これまで政府見解も自衛隊は合憲だとしてきており、何らおかしいと思わない。不具合も出ていないはずだ。

  ―民進党内には改憲を主張してきた議員もいます。見解がまとまりますか。
 確かに党内にも、支援母体の連合の中にも、憲法についてはさまざまな意見がある。党はこれから憲法調査会を中心に議論する。その際に、国民を巻き込んだ論議が要ると思うので、全国で憲法をテーマにした対話集会を近く始める。今後、党内意見をどう集約していくか見えてくるだろう。

  ―首相の改憲の提案手法はどう見ますか。
 言語道断だ。国民の代表が集まる国会で議論しないまま、特定の新聞社の紙面で意見を表明し、民間団体主催の会合にビデオメッセージを寄せた。真意を確認したり、疑問に応えたりする場も設けていない。国会答弁でも、首相と自民党総裁の立場を使い分け、野党が質問しても、詳しい説明を避けた。

  ―提案で首相は20年施行という目標も掲げました。
 最初から後ろを区切るやり方は理解できない。最終的には国民投票に委ねられるのだから、丁寧な国民的議論が必要なのに期限を設けるのは違う。「自分が首相の時に改憲したい」という思いが先行しているのではないか。改憲項目に、教育無償化など他党の主張を入れたのも、まず改正することを目的にしているからとしか見えない。(聞き手は田中美千子)

(2017年7月19日朝刊掲載)

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