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新エネ戦略 中電、「原発」見直し必至 廃炉対応 明示せず

 2030年代に原発ゼロを目指す政府の新たなエネルギー・環境戦略が決まり、原発の拡大を目指してきた中国電力は抜本的な事業の見直しを迫られる。中電は14日、従来通り原発を「重要な電源の一つ」とするコメントを発表。中止の方向の上関原発(山口県上関町)計画、2年で廃炉期限を迎える島根原発(松江市)1号機への対応を、明確にしていない。(東海右佐衛門直柄)

 政府の新戦略について中電はコメントで、課題や懸念への検証が不十分とし「国の将来に禍根を残しかねない政策」と指摘した。今後の対応については「先送りされた課題への国による取り組みを冷静に見極める」とするにとどめた。

 政府方針への具体的な対応について、中電には丁寧な地元説明が求められる。上関原発の地元には、計画に反対する声がある一方、雇用の確保や地域振興の観点から原発立地を望む意見も強い。

 島根1号機については、中電は「60年運転しても健全性に問題がない」としてきた。今回、運転が40年に制限されて廃炉時期が大幅に早まることになる。

 経営への影響も大きい。ある元役員は「長期の計画が大きく変わる。経営に激震が走るだろう」と懸念する。中電の原子力の構成比は出力ベースで約8%で、将来30%程度まで高める方針を掲げてきた。中長期の計画の練り直しは必至だ。

 原発の代わりに火力発電を増やした場合、燃料費が大幅なコスト増となる。中電は、仮に原発の稼働率がゼロになり、全て石油で代替すると年800億円の減益要因となると試算する。

 「今後の経営環境は大きく変わる」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券(東京)の荻野零児シニアアナリストは指摘する。中電が「未定」とする13年3月期業績について、同証券は原発停止により純損益が600億円以上の赤字と予想。「原発が再稼働しなければ、1年以内の料金値上げは避けられない」とみている。

≪中国地方の原発をめぐる動き≫

1970年 2月 島根1号機が着工
  74年 3月 島根1号機が営業運転開始
  82年 6月 上関町長が町議会で住民合意を前提とした原発誘致を表明
  84年 7月 島根2号機が着工
  88年 9月 上関町が中電に原発誘致申し入れ
  89年 2月 島根2号機が営業運転開始
  96年11月 中電が上関1、2号機の建設計画を山口県と上関町に申し入れ
2006年10月 島根3号機が着工
  09年 4月 上関1、2号機の準備工事開始
  10年 3月 設備の点検不備問題で島根1号機が停止
  11年 3月 福島第1原発事故を受け、上関1、2号機の準備工事が中断
  12年 1月 島根2号機が定期検査に入り、島根原発が全停止
       9月 政府が原発ゼロ戦略を決定

「国民生活や産業に影響」 中経連が反対談話

 中国経済連合会の山下隆会長(中国電力会長)は14日、政府が決めた新たなエネルギー・環境戦略に対し「国民生活や産業活動へ深刻な影響を及ぼすものと想定され、責任ある選択とは到底言えない」と抜本的な見直しを求めるコメントを発表した。

 新戦略は「実現不可能な再生可能エネルギーの大量導入や大幅な省エネの推進を前提としている」と指摘。政府に向けて「原子力の再稼働を含め、当面の電力の安定供給確保に万全を期するよう要望する」とした。

(2012年9月15日朝刊掲載)

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