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戦艦大和のメッセージ 記念シンポに寄せて <上> 日本水中考古学調査会 井上たかひこ会長

 東シナ海で眠る戦艦大和の潜水調査の成果を語り合うシンポジウム(実行委員会など主催)が9月9日、呉市役所内のくれ絆ホールで開かれる。基調講演する専門家2人に、呉市が昨年5月に実施した調査の意義や解明すべきポイントなどをつづってもらった。

腐食で劣化 定期観測を

 水中の遺跡から過去の人類の歴史を検証するのが、水中考古学である。世界の海には、まだ300万隻もの沈没船が眠っていると言われている。島国日本の周りにも遣唐使船、御朱印船など、何千もの歴史的な船が、埋もれているはずである。

 水中考古学は、フランスの海洋学者ジャック=イヴ・クストーが1943年にスキューバを開発したことがきっかけで発達した。とはいえ、ダイバーがスキューバ潜水で活動できるのは水深数十メートルまで。深海はまだまだ未知の世界である。

 しかし近年では、水中ロボットを利用することで、より深い海底へも手が届くようになってきた。例えば、大西洋の深海に沈むタイタニック号やフィリピン沖で発見された戦艦「武蔵」の調査などはその一例である。

 戦艦「大和」の水中調査も、同様に高度で科学的な調査だったと思う。海底の「大和」の映像は、驚くほど鮮明だ。有索無人潜水艇(ROV)によるハイテクな潜水調査の詳細は、「大和」の新たな側面も見せてくれるものと期待している。当シンポジウムでは、国内外の直近事例も併せて紹介する。

 海底の「大和」は、腐食による劣化が進んでいるようである。海にも鉄を食べるバクテリアが生息する。例えば、前回の調査と比べて、艦首の傾斜が大きくなり、表面の一部がめくれあがっていたことなどは、その一例である。周辺の塩分濃度などの変化を測定しながら、定期的に劣化状態をモニタリングする必要があるだろう。

 「大和」は大切な水中文化遺産であり、数少ない水中の戦争遺跡である。この貴重な財産を次の世代へぜひ引き継いでほしいと願っている。

いのうえ・たかひこ
 43年茨城県生まれ。テキサス州立テキサスA&M大学大学院修了。茨城大非常勤講師などを経て現職。トルコのウル・ブルン難破船や、元寇(げんこう)船など世界的な水中遺跡の発掘に参加。著書に「水中考古学」(中公新書)など。

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 シンポは午後1時半~4時。無料。往復はがきに住所、名前、年齢、電話番号を書いて8月14日(必着)までに郵送する。〒737―0029呉市宝町5の20、大和ミュージアム「シンポジウム」係。☎0823(25)3017。

(2017年8月8日朝刊掲載)
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