×

ニュース

入市被爆者がん死亡 投下3日以内 原医研・大滝教授ら算出

 広島原爆の入市被爆者のうち8月8日までに広島市内に入った人は、それ以降に入った人に比べ、固形がんによる死亡危険度(リスク)が、男性で13%程度、女性では8%程度高いことが、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の大滝慈教授らの研究で分かった。残留放射線や放射性降下物など間接被曝(ひばく)による人体への影響が、原爆投下直後の方が強かったため、と分析している。

 研究グループは、原医研のデータベースに登録され、1970年1月1日に生存していた入市被爆者4万7144人(男性2万7062人、女性2万82人)を2009年末まで追跡調査。原爆投下後6日目の8月11日から20日までに入市被爆した人の死亡危険度を1として、死因別に相対危険度を計算した。

 統計的な最適化処理をした結果、胃がんや肝臓がんなど、白血病を含まない固形がんでは、男性の場合、投下後3日以内に入市した人のリスクは、それ以降の人に比べ約13%高かった。女性では約8%高かった。

 中心となって解析した大谷敬子助教は「間接被曝の影響は、今までは無視できるレベルと考えられていたが、予想以上に大きいのではないか」と指摘。「直爆の被爆者についても、間接被曝の影響をあらためて評価すべきだ」と強調している。(宮崎智三)

入市被爆者
 被爆者援護法の規定では、原爆投下後15日目(広島の場合は1945年8月20日)までに、爆心地からおおむね2キロ以内に入った人をさす。広島県と広島市が被爆者健康手帳を発行した9万5586人(今年3月末現在)のうち、入市被爆者は2万7665人(28・9%)。

(2012年9月17日朝刊掲載)

年別アーカイブ