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社説・コラム

社説 日報問題 閉会中審査 稲田氏自ら説明尽くせ

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報隠蔽(いんぺい)を巡る問題で、衆参両院の委員会で閉会中審査があった。

 組織的隠蔽への関与の有無が焦点となっている稲田朋美元防衛相の姿はなく、解明はまったく進まなかったといえる。

 稲田氏は在任中、「特別防衛監察の結果が出たら国会で説明する」と繰り返したではないか。当事者として、出席して説明責任を果たすのが筋だろう。

 3日に就任した小野寺五典防衛相は両委員会で冒頭、「情報公開の重要性の認識が十分ではなかった」などと謝罪の言葉を重ねながら、7月28日に公表された特別防衛監察の結果を淡々と報告した。

 ただ、特別防衛監察の結果は稲田氏の関与についてあいまいな記述にとどまる。陸上自衛隊や防衛省の幹部から、稲田氏に日報取り扱いなどの説明があったことは認めているものの「日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できない」と断定を避けている。

 日報を非公表とする方針を決定・了承したことはなかったとも結論付けているが、関与の有無がはっきりしたわけではない。「書面を用いた報告や、非公表の了解を求める報告がされた事実はなかった」との記述はかえって「口頭での報告」はあったのかといった疑念も生む。

 複数の政府関係者は稲田氏が報告を受け、非公表とする方針を了承したと証言しており、陸自が監察本部に提出した内部報告書にも記されているという。野党の追及を受けた監察本部の担当者は「関係者の証言があやふやで発言が特定できなかった」などとの説明に終始した。

 小野寺防衛相も省幹部も明確な答弁を避け、調査の詳細を問われると「監察の性質上答えられない」「今後の監察が難しくなる」などとかわした。事実をつまびらかにできないなら何のための監察なのだろう。

 閉会中審査は特別防衛監察の結果を受けて疑問点を明らかにするための機会ではなかったのか。政府には、国民へ説明を尽くそうという姿勢がまったくうかがえない。

 野党は日報データがあったとの報告を受けた稲田氏が、国会で「なんて答えよう」などと発言したとされるメモをパネルで示し、その場に居合わせたとされる防衛省の辰己昌良審議官も追及した。「こうした発言があったことを特別防衛監察に認めたか」などと問われた辰己氏は「差し控えたい」と繰り返すばかりだった。

 この問題を巡り、防衛相、事務次官、陸上幕僚長の3人が辞任したことについて、小野寺防衛相は反省を込めて「異常な状況」であるとも述べた。そう認識しているならば、一刻も早く信頼を回復するため率先して稲田氏に説明を求めるべきではないか。日報の隠蔽問題は、文民統制(シビリアンコントロール)が機能していたかも問われる重大な事態である。

 小野寺防衛相は、特別防衛監察の結果を「しっかりした結論を出したものだ」として再調査や、陸自の内部報告書など関係資料の公表も拒否している。

 だがそもそも監察本部は防衛相の指示で設置されるものであり、調査には限界があったといえよう。第三者機関による調査が求められる。

(2017年8月11日朝刊掲載)

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