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社説・コラム

天風録 『怒りのマネジメント』

 周りの人の言葉や行動にカッとしたとき、どうすればいいか。まず、6秒ほどゆっくり数える。頭の中を真っ白にして。それも「怒らない技術」の一つらしい▲勧めるのは日本アンガーマネジメント協会。怒ると最初の6秒、脳内にアドレナリンが強く出るそうだ。その時間をやり過ごせば頭を冷やせるのだろう。火消しは最初が肝心―。なのに、米国と北朝鮮のリーダーは、それを分かっているのかどうか▲トランプ大統領は、これ以上脅せば「炎と怒りに直面する」と警告。すると北朝鮮側は「わが砲兵の神経を刺激した」と、グアム周辺へのミサイル発射をほのめかす。いったん表に出した怒りは、相手の感情も害し、互いにエスカレートするばかり▲隣国は、島根、広島、高知の上空をミサイルが通ると予告する。わが地域を名指しされ、私たちも穏やかではいられない。でもここで、怒りの渦にのみ込まれると、もっと怖い気がする▲怒らない技術は怒りをゼロにするのが目的ではないという。怒りと付き合いながら、後悔しないためのもの。挑発合戦の行き着く先に見えるのは紛れもなく戦火だ。私たち国民は冷静に訴え続けたい。米朝とも頭を冷やせ、と。

(2017年8月12日朝刊掲載)

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