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あいまい国策 上関に戸惑い 国から町に説明なし

 「原発の新増設は行わない」とした政府方針の具体策が見えてこない。枝野幸男経産相は、中国電力上関原発(山口県上関町)など本体着工前の原発建設を認めないと明言したが、原子力規制委員会の委員長は、新増設でも申請があれば審査すると表明。電力会社も推進姿勢を変えず、地元に戸惑いと不信が広がっている。(山本洋子、久保田剛)

 「(新増設は認めないという)原則の適用はぶれない方針だ」。新たなエネルギー・環境戦略の対応方針が閣議決定に盛り込まれた19日以降、枝野経産相は繰り返し「原則の徹底」を強調してきた。だが、個別原発については「地域の要望や事情を精査し、代替の新興策を示して最終判断する」と言及を慎重に避けている。

 地元意見を重視するとする一方で、上関原発計画の地元上関町に国からの説明はない。柏原重海町長は20日の町議会一般質問で「国の方針がころころ変わるので明確な判断は下せない」と不信感を表明。町幹部も「上関の中止を明言していない」と受け止める。

 中電は「上関の建設断念は現時点で考えていない」と推進姿勢を強調。閣議決定文の「不断の検証と見直しを行う」との表現を取り上げ、「即座に判断できない」とする。

 手続き的には、原発の許認可権限は経産相から原子力規制委員会に移った。田中俊一委員長は19日の会見で「本当に申請があり、判断を求められれば審査する」と説明。仕組み上、原子炉設置許可申請を済ませている上関原発は、安全審査を進めることができる。

 反対派の上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(57)は「政権が変われば方針転換するのでは」と懸念を強める。

 国主導で計画の中止を可能にできる仕組みが今後の焦点となる。経産省は「(事業者に新増設を行わないよう求める)法整備が必要か精査する」(枝野経産相)として検討を急ぐ。立地地域が政策変更で厳しい岐路に立たされている以上、国は一刻も早い地元との直接対話が求められる。

原発の新増設計画
 全国計14基の新増設計画がある。うち中電島根原発(松江市)の3号機など本体建設中の3基について政府は今月、「新増設に当たらない」として建設容認を表明した。本体未着工の原発のうち、上関原発1号機などは原子炉の許可申請が提出されているが、安全審査がストップしている。

(2012年9月26日朝刊掲載)

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