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修学旅行生数伸び悩む ピークの4割減 広島市、関東に売り込み検討

事前学習や費用ネック 「平和意識の低下懸念」

 広島市への観光客が増え続ける中、修学旅行生は年間30万人台にとどまっている。被爆の実態に触れてもらおうと市が誘致に力を入れているが、少子化を背景に伸びを欠く。市は、「市場」の大きい関東圏の学校の新規開拓が課題とみて対策を検討している。(渡辺裕明)

 秋の修学旅行シーズンに入った平和記念公園(中区)。連日、原爆資料館の外で、入場を待つ子どもたちの姿が見られる。市によると、4~8月の修学旅行生は13万4334人。年間32万2529人だった2016年度と同じペースという。

 16年度は、ピークだった1985年度の57万3072人から4割減だった。市は04年度から旅行会社出身者を含む担当職員3人を置き、毎年度、全国の約800校を訪問。ニーズに応じて関連資料も提供している。07年度に29万8803人で底を打ったが、30万人台前半から増えない。

 国立社会保障・人口問題研究所の全国人口の推計では、中高生に当たる13~18歳の人口は15年の717万人が65年には398万人とほぼ半減する。市観光政策部は「広島を訪れる若者が減れば被爆体験の風化、平和意識の低下や希薄化が進む恐れがある」と案じる。

 市はこのほど、地域別の修学旅行の傾向を分析。関東圏1都6県から15年度に市を訪れた修学旅行生は中学生2万3487人、高校生2万4173人だった。他地域と比べて人数は多いが、関東圏全体の修学旅行生でみれば約7%にとどまっていた。中学では近畿、高校は沖縄方面を訪れる学校が多いという。

 広島への修学旅行を08年から続ける栃木県立石橋高は来月、2年生約240人が訪れる。生徒は事前学習で講義を受けたり、夏休みに平和をテーマにしたリポートを書いたりした。担当の影山貴之教諭(43)は「平和学習が修学旅行の大きな目的の一つ。原爆資料館などに行って、実際に見ると生徒が受ける衝撃は大きい」と話す。

 一方、関東の学校で広島を修学旅行先に選択していない理由は、距離や費用面に加え、事前学習がネックになっているという。神奈川県のある市立中の担当者は「先生自身がどのような事前学習をすればいいか分からない」。別の市立中の担当者も「広島を修学旅行で訪れた経験のある先生が少ない」と明かす。

 同部の今井雅敏・観光プロモーション担当課長は「関東圏はまだ掘り起こせる可能性を秘めている。誘致につながる施策を考え、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現という平和への思いを共有してもらいたい」と話す。

(2017年9月29日朝刊掲載)

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