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ノーベル平和賞 ICAN 核兵器禁止条約に貢献 国際NGO 広島・長崎と連携

 2017年のノーベル平和賞に、国際非政府組織(NGO)の核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン)、本部スイス・ジュネーブ)が決まった。ノルウェーのノーベル賞委員会が6日、発表した。広島、長崎の被爆者や市民団体と連携して廃絶を訴え、7月の核兵器禁止条約の制定へ「革新的な努力」を尽くしたと指摘。核兵器の非人道性に焦点を当てて廃絶を求める取り組みを評価し、核保有国にも努力を促した。(岡田浩平、金崎由美)

 授賞理由では、核兵器使用による非人道的な結果に言及。核開発を続ける北朝鮮を挙げ「多くの国が核を手に入れようとする脅威が現実にある」と指摘した。核保有国に対し、核兵器削減に向け「真剣な交渉」を始めるようにも求めた。

 レイスアンデルセン委員長は「核廃絶に取り組む全ての個人、団体をたたえるものだ」と説明。ICANは「この賞は広島、長崎の被爆者のためのものでもある」との声明を出した。フィン事務局長は記者会見で12月10日にオスロである授賞式典に「被爆者もいてほしい」と述べた。賞金は900万スウェーデンクローナ(約1億2400万円)。

 広島県被団協理事長で日本被団協の坪井直代表委員(92)は「同じように行動してきたICANの受賞はうれしい。命ある限り核兵器のない平和な世界実現を訴え続けたい」と歓迎した。

 ICANは各国のNGOが加盟する国際団体で、日本からは広島県医師会に事務局を置く核戦争防止国際医師会議(IPPNW)日本支部や、広島の若者たちでつくる「プロジェクト・ナウ」などが名を連ねる。ピースボート(本部・東京)の川崎哲共同代表が、ICANの活動の中核となる国際運営委員を務める。

 IPPNWで活動するオーストラリアの医師ティルマン・ラフ氏らが中心となり2007年に結成。NGOが国際世論を喚起し対人地雷禁止条約を実現させた先例に着想を得たという。

 核兵器を「非人道兵器」として禁止すべきだとの認識が広がる中、ICANは、核保有国を抜きにしてでも条約化を急ぐよう訴える方針を議論し、各国政府を説得。各国で核兵器の非合法化に関する市民討論会を開くなどの啓発活動を続け、12年8月には広島市で国際会議を主催した。

 今年の条約制定交渉では広島の被爆者や二つの広島県被団協などと手を携え国際世論を盛り上げた。

 条約は50カ国・地域の批准で発効するが、核保有国や米国の「核の傘」に頼る日本は署名を拒んだまま。被爆国への圧力が国内外からさらに強まりそうだ。

条約発効 追い風

 松井一実広島市長の話 市民ベースで、被爆者の気持ちをしっかり受け止めて活動する有力な同志が栄誉ある賞を受けた。世界情勢は厳しいといわれる中、核兵器をこの世からなくすという価値観についての評価を世に知らしめてくれた。喜びたい。核兵器禁止条約の発効へ市民的な活動をしていく必要がある中で追い風になる。

廃絶の機運 期待

 湯崎英彦広島県知事の話 条約による核兵器禁止を達成するための草分け的な努力を行ってきたICANの受賞は大変喜ばしい。その努力に改めて敬意を表す。今回の受賞で、核兵器廃絶の機運が高まり、各国の取り組みが進展する契機になることを強く期待する。核兵器廃絶を目指す広島県にとっても強力な後押しになると考える。

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)
 オーストラリア・メルボルンで2007年に活動を始め、世界101カ国のNGO468団体が加盟する国際的な組織。日本からはヒューマンライツ・ナウ、IPPNW日本支部、ピースボート、反核医師の会、プロジェクト・ナウの5団体が加盟。平和首長会議(会長・松井一実広島市長)も「国際パートナー」に名を連ねる。核兵器禁止条約の制定運動のほか、核兵器産業へ投資や国家予算の支出をしないよう訴える運動も展開。事務局はスイス・ジュネーブ。

(2017年10月7日朝刊掲載)

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