連載・特集

本社発行「学ぼうヒロシマ」5年目 学校現場 活用広がる

 中国新聞社が中学生、高校生向けに6月に発行した平和学習新聞「学ぼうヒロシマ」がことしも配布先の広島、山口県内の学校現場で広く活用されている。発行5年目を迎え、2017年版は内容を一部リニューアルした。被爆者の証言や原爆に関する知識を学ぶだけでなく、平和について語り合い、自分たちに何ができるか考えるきっかけになっている。(桑島美帆)

■総合学習 班で話し合い 廿日市・阿品台中

 廿日市市の阿品台中は3年生の総合学習で、初めて「学ぼうヒロシマ」を使用した。8月下旬の平和学習の場に、生徒たちが事前に新聞を読んで臨んだ。

 学年主任の川本裕子教諭(50)が企画。世界遺産の原爆ドームを深く学ぶページや原爆や核兵器について知る「ヒロシマQ&A」を基にした17問のワークシートの答えを、班に分かれて話し合いながら書き込んだ。

 「原爆の被害を詳しく知り、あらためて核兵器の怖さを知った。核を使って他国を支配することは間違っていると思う」と伊達朱音さん(15)。岡崎壮真さん(15)は「放射線の影響による病気など、知らないことが書いてあり、もっと知りたくなった」と話した。

 「生徒だけでなく教員たちも自分の問題としてヒロシマを学べる」と八川慎一教頭(53)は指摘する。その後3年生は原爆資料館を見学し、被爆者の証言も聞いた。11月の文化祭では一人一人が平和のために自分が取り組むことを「私の平和宣言」として掲示する。

■朝読書に採用 意見発表 広島・沼田高

 9月、広島市安佐南区の沼田高の3年生のクラスで高校生活最後の平和学習があった。「戦争の恐ろしさを伝えることが大事」「小さなことの積み重ねが大きなものになる」。黒板には平和のためにできることを書いたメッセージが並ぶ。

 生徒たちはことしの「学ぼうヒロシマ」を朝の読書の時間などに熟読。3年間の集大成となる平和学習の授業では、印象に残った記事を巡り、意見交換した。核兵器禁止への課題や、紙面で紹介した在日韓国人被爆者が語った差別の苦しみを議論し、グループごとにメッセージを発表した。

 「想像できない苦しみを体験したのに前向きに生きる証言に涙が出た。友達との意見交換で言葉にすることの大切さにも気付いた」と石原菜月さん(17)。県外や海外で活躍する日を夢に描きながら、ヒロシマを語り継ぎたいという。

 野依英二校長(55)は「広島出身者としての使命感を持ち、平和について語れる人になってほしい」と生徒たちに期待している。

■被爆証言で英語を勉強 広島・宇品中

 外国人観光客の拡大などで英語でヒロシマを発信する機会も増えている。広島市南区の宇品中は平和学習に加え、3年生の英語の授業でも「学ぼうヒロシマ」の活用を始めた。英文の被爆証言があるからだ。

 3年生は夏休みに掲載された2人分の英語の証言を読んで、印象に残った部分を書き移した上で8月末の英語の授業に臨んだ。「sad(悲しい)」「angry(怒っている)」。角崎祐美教諭(56)の指導で感情を表現する英単語の発音や意味を確認。証言を読んで感じたことを英語で発表し、グループに分かれて声に出して英文の記事を読んだ。

 永瀬裕萌さん(14)は「初めて被爆体験を英語で読み、核や人種差別など新しい単語を知った。語彙(ごい)を増やし、海外の人に英語で伝えられるようになりたい」と目を輝かせていた。木下健一校長(55)は「グローバル化が進む中、一人でも多くの生徒が海外へ発信できる人に育ってほしい」と願う。

「学ぼうヒロシマ」とは

 「学ぼうヒロシマ」は、中国新聞社が広島国際文化財団の協賛を得て2013年から毎年、発行する。中学生向けと高校生向けを制作し、2017年版はタブロイド判、カラーの24ページ。リニューアルでは原爆ドームに焦点を当て、その歴史や保存の営みを伝えた。中国新聞ジュニアライターたちが原爆の爪痕を歩いたマップなども新設。ヒロシマQ&Aのページでは、オバマ米大統領の広島訪問の意義などを解説した。漫画も含めた原爆・平和の本紹介は2ページに拡大した。

 例年通りに本紙連載「記憶を受け継ぐ」から10人の被爆証言を掲載し、うち2人には中学・高校の学習レベルに合わせた英訳も付けた。約22万部を発行、広島県全域の中学・高校と新聞活用協定を結ぶ山口県東部10市町の中学に中国新聞販売所を通じて無料で配布した。

 新聞の活用の輪は各地に広がり、首都圏を中心に修学旅行の事前学習などのために送付を希望する学校が増えている。加えて大学教育の現場では、比治山大現代文化学部子ども発達教育学科の道徳教育で、小学校教員を目指す学生らの教材となる予定だ。

(2017年10月9日朝刊掲載)
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