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連載・特集

もてなしの島 朝鮮通信使「世界の記憶」登録 <下> こども学芸員

世代を超えて関心喚起

 「登録へ向けて日韓で資料を集めています。書物の中の史実と絵が合致しています」

 こども学芸員は、瀬戸内海を行く朝鮮通信使の船団を描いた絵巻物「朝鮮人来朝覚備前御馳走船行烈図(ごちそうせんぎょうれつず)」の前に立ち、誇らしそうに解説した。

「知識負けぬ」

 呉市下蒲刈町の松濤(しょうとう)園。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)への登録に期待が高まっていた10月中旬のことだ。こども学芸員は、日韓両国の見学者計36人を案内した。

 こども学芸員を務めたのは下蒲刈小の5、6年生12人。総合学習の集大成を発揮する舞台だ。6年の原田知佳君(11)は「通信使の知識は他校の児童には負けない」と胸を張る。

 来年1月も案内する。登録決定でさらに弾みがついた。6年の渡辺明花さん(11)は「古里の住む島の歴史が世界に認められた。これからも学び続けたい」。同校の小早川崇教諭(46)は「継承にはこどもの関心が欠かせない」と力を込める。

勉強会を拡大

 地元観光ボランティアも勉強会を、市の他地域のボランティアへも拡大する。2003年から続ける船田孝興さん(76)は「受け入れ側が深く知るのが先決。通信使について説明できる人を一人でも多く増やす」と話す。

 朝鮮通信使再現行列が始まった2003年からことしまでに、島内の人口は700人減少した。現在は1463人(9月末)。65歳以上が48・9%を占める。いまでは行列の参加者の半数を島外からの人が支える。

 朝鮮通信使行列保存会の菅原広三会長は「行列を絶やす訳にはいかない。世界の名に恥じないようにいっそう気持ちを入れて臨む」と誓う。(今井裕希)

(2017年11月3日朝刊掲載)

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