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子どもに銃向け 土地分断 パレスチナ占領の実態 イスラエル紙記者 広島で訴え

 第3次中東戦争でのイスラエルによるパレスチナ占領から、ことしで50年。イスラエルの有力紙ハーレツのアミラ・ハス記者(61)はユダヤ人ながら、パレスチナ人に対する人権侵害の現状を告発し続けている。講演のため広島市を訪れ「ジャーナリストとして自由を奪われた人たちを報じる役割がある」と強調した。

 広島大出身のジャーナリスト土井敏邦さんや中東研究者らでつくる実行委員会に招かれ、来日した。「パレスチナ人の日常に入り、現地から報じたい」と1993年にガザ地区で暮らし始め、現在はヨルダン川西岸地区のラマラ近郊に職住を構える。

 両地区はイスラエルとパレスチナ側の93年のオスロ合意により自治区となったが、ヨルダン川西岸の多くはイスラエルの支配下にあり、ユダヤ人入植地が拡大。分離壁の建設も進む。ガザはイスラエル軍に完全に包囲され、困窮の中で市民が空爆に巻き込まれるなどしている。

 ハスさんは「パレスチナ人の子どもにとって、兵士から銃口を向けられるのは日常的。17キロ先にある海を見たことも近くの町に住む親類と会ったこともない。土地の分断と、人が移動する権利を奪うことは、占領支配の基本だ」と現地の事情を解説。オスロ合意は入植地拡大の隠れみのでしかなかったと指摘する。

 「『もう手遅れ』と言ってはならない。ただ、イスラエル国内からの変化は期待しづらい。日本を含めて国際社会がもっと働き掛けてほしい」と訴えた。(金崎由美)

(2017年11月27日朝刊掲載)

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