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規制委 放射性物質拡散を予測 島根原発周辺 不安の声

 規制委が中国電力島根原子力発電所(松江市)の事故を想定した放射性物質の拡散予測を示した24日、避難が求められる被曝エリアに入った松江、安来市の市民からは不安の声が上がった。中電に立地自治体並みの安全協定締結を求めている安来市は「被曝のリスクに市境は関係ない」と、主張の正当性を訴えた。(樋口浩二、川上裕)

 「県外への避難を本気で考えんといけん」。原発の南東約26キロで、被曝エリアが迫る安来市役所近くに家族6人で暮らす陶山俊郎さん(88)は心配そうな表情を浮かべた。「これほど原発事故を身近に考えさせられたのは初めて」

 原発の南西約6キロ、松江市東長江町の柳浦功治さん(73)は「県庁がまひしたら大変。避難計画が絵に描いた餅に終わる」とし、被曝エリアとなった県庁の機能維持を懸念した。

 一方、安来市の松本城太郎統括危機管理監は「事故のリスクに市境は関係ない、と国のお墨付きが出た」と受け止める。中電に締結を求める安全協定は「全国的に周辺自治体とも結ぶ動きが出てほしい」と期待した。

 国の原子力災害対策重点区域となる原発30キロ圏の島根県内4市では出雲、雲南市が被曝エリアから外れた。出雲市防災安全課の池内雅亮課長は「あくまで予測値。事故への備えを進める」とした。

 県避難対策室の若槻真二室長は「実際の事故では風向きも天候も読めない。安全な避難には放射線量を多数の地点で測り、県と4市が情報を共有することが大事」とした。

協定見直しは不可避 中電

 規制委が示した島根原発の放射性物質の拡散予測で、高線量のため避難が必要なエリアは周辺自治体の安来市にも及ぶ。周辺自治体が求める「立地市並みの安全協定」に中国電力は消極姿勢だが、幅広い自治体が安心できる協定へと見直しが迫られる。

 今回の拡散予測に対し、中電は「万一の事故時にも、関係自治体と緊密に連携する」とのコメントを発表。安全協定の拡充については「答えられない」としている。

 中電が協定で「原子炉増設時の事前了解」や「トラブル時の立ち入り調査権」などを認めているのは、島根県と松江市だけ。福島での原発事故を受け、出雲、雲南、安来市が「立地自治体並みの権限」を求めたが、中電は「困難」と伝達。その後「今後も協議したい」としている。

 背景には、原発の稼働をめぐる周辺自治体の「発言権」への警戒があるとみられる。

 今回の予測で、高線量エリアが広範囲に及ぶことが具体的に示された。安来市の高線量地点は鳥取県境にも近い。立地自治体と同様のリスクを負う周辺自治体への対応が、中電に求められる。(東海右佐衛門直柄)

伊方原発の拡散 本州はエリア外

 四国電力の伊方原発(愛媛県伊方町)は、山口県上関町の一部が30キロ圏に入る。原子力規制委員会の拡散予測では、100ミリシーベルトの高線量エリアは山口県には到達しない。

 同原発から本州側への拡散は、いずれも瀬戸内海上にとどまる。最大は原発から北北西に11・7キロの海上。一方、南東から南西にかけての拡散では、伊方町などが高線量となる。同原発は3基で202・2万キロワットの総出力がある。

(2012年10月25日朝刊掲載)

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