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被爆前の営み 鮮やか 広島女学院高生 写真カラー化 記憶掘り起こし継承

 広島市中区の広島女学院高の生徒が、戦前の広島の写真をカラー化する作業を進めている。デジタル技術を生かした平和教育に取り組む首都大学東京の渡邉英徳准教授(43)と連携。原爆で消えた営みを紡ぎ直し、被爆者の記憶の掘り起こしを促す。(城戸良彰)

 渡邉准教授は、早稲田大の石川博教授たちが2016年に開発した技術を活用。人工知能(AI)が自ら学ぶディープラーニングという手法を応用し、大量の白黒・カラー写真の組み合わせから自然な色を学んだAIに自動で彩色させる仕組み。高校生も手軽に扱えるという。

 「核廃絶!ヒロシマ・中高生による署名キャンペーン」に参加する同高署名実行委員会(14人)の1、2年生10人が11月、首都大での研修に参加。カラー化の仕組みや操作を学んだ。早速、戦前の家族写真を所有する被爆者の浜井徳三さん(83)=廿日市市=に提供を依頼。約250枚から特に思い出深いという35枚を選び、「再現」した。

 浜井さんは原爆投下当時11歳で、中島本町(現中区)の実家から現在の廿日市市にある親族宅に疎開していた。理髪店を営んでいた父と母、兄、姉を原爆で失い、自身は入市被爆した。戦災を避けるために託されていた着物などの日用品に交じっていたアルバムが戦後、手元に残った。

 今月下旬、浜井さんは同高で、カラー化された写真を受け取った。家族が一堂に会した写真に「本当にきれい。昨日のよう」。かつて広島市内にあった桜の名所・長寿園での花見の場面では、背景の青々とした杉に「杉鉄砲でよう遊んだなあ」とほほ笑んだ。「長寿園までの道に弾薬庫があって幼心に怖かった」と新たな記憶もよみがえった。

 「カラーだと、氷が解けるように写真を取り巻く物語を思い出してくれる」と渡邉准教授。自身が制作する被爆の証言動画などを紹介するウェブサイト「ヒロシマ・アーカイブ」で、写真の一部公開を予定する。

 同委員会は、同高前身の広島女学院高女2年時に被爆し、今月10日のノーベル平和賞授賞式で演説した、サーロー節子さん(85)=カナダ・トロント市=の家族写真もカラー化し、式に臨むサーローさんに贈った。

 作業の中心メンバーの一人、1年庭田杏珠さん(16)は「被爆前の広島に、現代と変わらない日常があったことを伝えたい」と意気込む。今後、別の被爆者にも呼び掛け、カラー化の取り組みを広げていく考えだ。

(2017年12月30日朝刊掲載)

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