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原爆資料館本館 大規模リニューアルへ 犠牲者一人一人と向き合う 完成19年春目標

 原爆資料館は1955年の開館以来、3度目の大規模リニューアルに向けた作業を本館で続ける。2018年夏再オープンを想定していたが、重要文化財である本館建物部分の追加工事などが必要となり、目標は19年春に延期された。ただ新展示の方向は固まっている。これまで以上に実物資料の遺品などを軸に据え、来館者に犠牲者一人一人と向き合ってもらう。

 中国新聞カメラマンの故松重美人さんが被爆当日に撮影したカットも含め、写真を通じて原爆投下をイメージ。広島市中心部の建物疎開作業に動員され、死亡した子どもたちが身に着けていた学生服やもんぺ、かばんなど約40点を1カ所に集める。その周りに爆風で曲がった鉄扉や欄干などを置き、床には熱線で溶けた石と瓦を敷き詰める。「その場に立てば破壊されたヒロシマの街をイメージできるように」と加藤秀一学芸課長は言う。

 膨大な所蔵品からどれを展示するか選んでいる。広く知られる黒焦げの弁当箱などは1点ずつガラスケースに入れ、遺影と言葉を添えるという。どの犠牲者にも名前があり、未来を奪われた事実を伝えるためだ。過去の展示はどうしても固定化しがちだった。その反省も踏まえ、新展示はもっと多くの資料を紹介すると同時に、保存の意味もあって常設展示の入れ替えを検討している。遺品や写真だけでは伝え切れない原爆の悲惨さは被爆者が描いた「原爆の絵」でも補う。

 見学を終え、出口へ向かう通路は平和記念公園を眺めながら気持ちを整理し、平和に思いを寄せる開放的スペースにする方針だ。

 原爆資料館は広島平和記念都市建設法に基づく平和記念施設として開館した。米大統領オバマ氏が訪れた16年度は過去最多の173万9986人が訪れ、外国人の来館が急増している。耐震改修を始めるのに合わせ、東館、本館の改修と展示見直しを進め、17年4月に東館がオープンした。

(2018年1月3日朝刊掲載)

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