連載・特集

11市町「署名すべき」 核禁止条約 山口県内19首長アンケート

「すべきでない」はゼロ

 国連で昨年成立した核兵器禁止条約を巡り、山口県内全19市町の首長の過半数の11人が、将来的な実現も含めて「署名すべきだ」と考えていることが、中国新聞のアンケートで分かった。一方で、条約に署名していない日本の対応が適切かどうかについては「どちらともいえない」が14人と7割を超えた。国の対応への評価を控える姿勢も浮き彫りになった。(折口慎一郎)

 同条約については、「将来的には署名すべきだ」が最多の8人。「速やかに署名すべきだ」の3人と合わせた計11人が署名に前向きな考えを示した。「署名すべきでない」はゼロだった。理由の記述では、「核兵器を廃絶し、世界恒久平和の実現を目指さないといけない」(木村健一郎・周南市長)といった信条が見られる。

 一方、11人のうち9人が国の判断について、「どちらともいえない」を選んだ。「国の方針に言及する立場にないため」(井原健太郎・柳井市長)などと、地方自治体の長であることを理由に明確な評価を明らかにしない姿勢が目立つ。

 これに対し、「適切ではない」を選択したのは市川熙・光市長だけ。「被爆国であるわが国は速やかに署名すべきだ」と明記した。

 「適切だ」とした椎木巧・周防大島町長と前田晋太郎・下関市長は理由を記していない。

 核兵器を禁止し、廃絶する条約の締結を全ての国に求める「ヒバクシャ国際署名」に署名済みは12人。このうち9人がアンケートでは国への評価を避けた。署名したことについては、「一個人として」(藤道健二・萩市長)「恒久平和を願う一人として」(花田憲彦・阿武町長)などと説明した。

 昨年12月には同条約の制定に尽力した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))がノーベル平和賞を受賞。国は「日本のアプローチとは異なるが、核廃絶というゴールは共有している」とした上で、「核軍縮を巡って国際社会の立場の違いが顕在化した。核兵器国も巻き込む形で現実的かつ実践的な取り組みを進める」としている。

 <アンケート概要>山口県内全19市町の首長に核兵器禁止条約に対する考え方を質問した。「日本は核兵器禁止条約に署名すべきか」は、「速やかに署名すべきだ」「将来的には署名すべきだ」「署名すべきではない」「どちらともいえない」の4択で、「署名しない日本の判断は適切だと思うか」は「適切だ」「適切ではない」「どちらともいえない」の3択、「ヒバクシャ国際署名に署名したか」については、「した」「するつもりだ」「しない」の3択で尋ねた。各項目について、回答の理由も自由記述で求めた。昨年12月7日に首長宛てに発送。同18日までに「無回答」を含めていずれも回答があった。

<核兵器禁止条約アンケート>

①自治体名
②首長名
③問1
④問1の回答理由
⑤問2
⑥問3

①岩国市
②福田良彦
③無回答
④無回答
⑤無回答
⑥した

①柳井市
②井原健太郎
③将来的には署名すべきだ
④将来的に署名できる環境となることを切望する
⑤どちらともいえない
⑥した

①光市
②市川熙
③速やかに署名すべきだ
④核兵器のない世界の実現を目指し、条約の早期発効及びより実効性の高い条約となるよう、被爆国であるわが国は速やかに署名すべきだ
⑤適切ではない
⑥した

①下松市
②国井益雄
③どちらともいえない
④国政に関する内容であり、発言する立場にない
⑤どちらともいえない
⑥した

①周南市
②木村健一郎
③将来的には署名すべきだ
④核兵器を廃絶し、世界恒久平和の実現を目指していかなければならない
⑤どちらともいえない
⑥しない

①防府市
②松浦正人
③どちらともいえない
④条約への不参加は、日本政府が慎重に検討を重ね、判断した結果であり、その判断に対して一自治体として意見するべきものではない
⑤どちらともいえない
⑥しない

①山口市
②渡辺純忠
③将来的には署名すべきだ
④世界から核兵器を廃絶し、恒久平和を実現することはわが国の誰もが願っている。「核兵器のない世界」に対して現実に資するとされる取り組みが進展していくことを期待している
⑤どちらともいえない
⑥した

①宇部市
②久保田后子
③速やかに署名すべきだ
④無回答
⑤どちらともいえない
⑥した

①山陽小野田市
②藤田剛二※
③無回答
④無回答
⑤無回答
⑥無回答

①美祢市
②西岡晃
③どちらともいえない
④非核平和宣言都市であり、平和首長会議に加盟する本市で、核兵器の廃絶と、世界恒久平和の実現は切願している。しかし、国の政策や判断について一地方公共団体の長として意見すべき立場にない
⑤どちらともいえない
⑥した

①萩市
②藤道健二
③将来的には署名すべきだ
④無回答
⑤どちらともいえない
⑥した

①長門市
②大西倉雄
③どちらともいえない
④本案件については、国において決定されるもので、答える立場にはない
⑤どちらともいえない
⑥した

①下関市
②前田晋太郎
③どちらともいえない
④無回答
⑤適切だ
⑥無回答

①和木町
②米本正明
③将来的には署名すべきだ
④核のない世界を目指すべきだ
⑤どちらともいえない
⑥した

①周防大島町
②椎木巧
③将来的には署名すべきだ
④無回答
⑤適切だ
⑥した

①上関町
②柏原重海
③将来的には署名すべきだ
④無回答
⑤どちらともいえない
⑥するつもりだ

①田布施町
②長信正治
③速やかに署名すべきだ
④核兵器禁止条約は核兵器廃絶。核廃絶ではない
⑤どちらともいえない
⑥するつもりだ

①平生町
②山田健一
③将来的には署名すべきだ
④無回答
⑤どちらともいえない
⑥するつもりだ

①阿武町
②花田憲彦
③どちらともいえない
④国策であるため、一地方自治体が答えるべき事項ではないと考える
⑤どちらともいえない
⑥した

敬称略。※は、アンケートへの回答はなく、別紙に「設問の本旨が政府の高度な政治判断に基づくもので、意見を申し上げることができない」と回答。

国民の声で機運を 被爆者の思い継承

ゆだ苑 岩本理事長に聞く

 県原爆被爆者支援センターゆだ苑(山口市)は5月、発足から50年を迎える。「県内被爆者の支援と核兵器廃絶に向けた平和運動の推進」を合言葉に活動を続けてきた。

 昨年、核兵器を巡る国際情勢は国連での禁止条約成立など目まぐるしく動いた。県内でも、被爆者自らが呼び掛け人となったヒバクシャ国際署名を求める組織が発足した。

 一方で、条約成立は核兵器国と非核兵器国の溝の深さを際立たせた。米国の「核の傘」の下にいる日本も条約には署名していない。

 県内の被爆者数は2809人(昨年3月末現在)。人口比率は広島、長崎両県に次いで全国3番目の高さだ。被爆者の願いをどう受け止め、何をなすべきか。首長へのアンケート結果への評価も合わせて、ゆだ苑の岩本晋理事長(74)=山口市=に聞いた。(折口慎一郎)

  ―アンケート結果をどう受け止めますか。
 「署名すべきだ」が過半数を占めたのは被爆国として当然だ。被爆者が苦しんできた事実を継承してきた一つの証しだ。

 ただ、「署名すべきだ」と答えない首長もいた。核兵器の廃絶は日本だけではできない。まずは国内の機運を高める必要があるが、そのためには国民が声を上げ、首長全員が「署名すべきだ」という時代をつくらないといけない。

  ―「アプローチは異なるが、ゴールは共有している」として署名しない日本政府の対応をどう思いますか。
 道筋は100も200もあるだろう。ただ被爆者はいずれ、いなくなる。ショートカットの一つが核兵器禁止条約への署名だ。急がないといけない。

  ―節目を迎えるゆだ苑の取り組みは。
 2016年に被爆地・広島をオバマ前大統領が訪れ、昨年は禁止条約が制定されるなど、核兵器廃絶のチャンスが広がっている。

 150年前の明治維新は歴史に刻まれた。当時を知る人がいなくなるからこそ、継承が大事になる。被爆者の思いを伝える平和教育に力を注いでいく。

核兵器禁止条約
 核兵器の開発や保有、使用、使用するという威嚇などを全面禁止する条約。前文で「被爆者」の受け入れ難い苦しみに留意すると明記した。条約制定交渉には120カ国以上が参加。昨年7月の国連の会議で賛成122で採択された。米国やロシアなどの核保有国、日本は不参加だった。

(2018年1月5日朝刊掲載)
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