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中電が建設 被爆旧変電所 解体へ 広島市 一部保存を検討

 広島市は31日、南区の被爆建物「E.R.E宇品御幸ビル」(旧中国配電南部変電所)が、解体されると発表した。所有してきた中国電力の子会社エネルギアL&Bパートナーズ(中区)が老朽化などを理由に不動産業者に売却し、業者は解体して跡地活用を進めるため。市は同日付で市の被爆建物登録台帳から抹消した。建物の一部が被爆を伝えるモニュメントとして残るように業者との協議を進める。(水川恭輔)

 ビルは1943年に中国配電(現中国電力)が建設し、鉄筋2階建て延べ約370平方メートル。爆心地の東南約3・8キロにあり、原爆によって窓ガラスが割れるなどしたが、被害は比較的軽く、被爆の翌日から送電を再開したという。

 94年まで中電宇品変電所として使われ、その後子会社から飲食店に貸された。ただ、ここ数年は使われず、外壁が剝離して道に落ちるなどしていたという。中電の子会社は昨年12月、マンション販売などのフリート(東区)に売却した。

 市によると、中電の子会社から同月、老朽化で維持管理が困難などの理由で売却した、との報告を受けた。売買した両社にビルの保存を要請したが、受け入れられなかったという。フリート担当者は「跡地に建物を建てる形の資産活用になると思う」とし、近く解体工事に入るという。

 市平和推進課は「被爆者が高齢化し、被爆建物の重要性が増す中、解体されるのは残念。建物の一部でも残してほしい」と求める。フリートも一部のモニュメント保存について「市と協議を進めたい」とする。

 市への被爆建物登録は1996年には98件に上ったが、その後減少し、今回の抹消で85件になった。市は本年度内に民間の被爆建物の所有者に文書を送り、建物の現状・保存への意向を確認。保存工事に対する市の補助制度をアピールして保存を促す。

(2018年2月1日朝刊掲載)

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