社説・コラム

社説 日韓首脳会談 対話の機運を高めたい

 2本のくぎを刺すため、安倍晋三首相はきのう韓国を訪れ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談した。

 首相の訪韓は約2年3カ月ぶりで文政権誕生後では初めて。ここで1本目のくぎと言えるのが、従軍慰安婦問題で「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった、2015年の日韓合意の完全履行を求めたことだ。

 文大統領は合意時の朴槿恵(パク・クネ)前大統領にも増して後ろ向きな発言を繰り返し、安倍首相は一時、平昌冬季五輪の開会式欠席を示唆した。訪韓には賛否両論あったが、首相が会談で口にした「未来志向」の日韓関係には決してマイナスとはなるまい。

 会談で文大統領は日韓合意の中身を尊重する考えを示したが、韓国世論の一部にはなお強い反発がある。両国関係のさらなる深化を求めたい。

 日本側がもう1本刺したくぎが核・ミサイル開発を進める北朝鮮への韓国側の対応である。

 五輪を機にした「南北対話」が朝鮮半島の非核化や真の平和につながるのが望ましい。ただ北朝鮮ペースの対話を「ほほえみ外交」と日本政府が呼ぶのは韓国が過度な融和に傾斜し、日米韓の圧力路線に溝が生まれかねないと警戒しているからだ。

 結束を再確認するため五輪に先立ち3カ国がそれぞれ開いた会談で、図らずも日米と韓国の間で「温度差」が際立つ形となった。安倍首相とペンス米副大統領が「圧力を最大限まで高める」としたのに対し、続く米韓会談で文大統領は「多角的な対話の努力が必要だ」と述べた。

 日韓会談で安倍首相は「対話のための対話は意味がない」と北朝鮮を突き放したが、はなから門戸を閉ざすべきではない。圧力一辺倒では暴発を招く恐れもある。北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させるには、対話と圧力の同時進行が求められる。米国も巻き込んで対話の機運を醸成することこそ、平和外交を旨とする日本の使命だろう。

 むろん文大統領にも覚悟が問われる。会談で「北朝鮮の核保有を認めない」との認識を共有したものの、昨年の大統領選で南北融和を掲げた経緯がある。北朝鮮の「ほほえみ」に、韓国が甘い顔を見せないか心配だ。

 そう思わせるのは北朝鮮の貨客船「万景峰92」の韓国接岸を許したこともある。五輪応援団などを乗せて来たとはいえ韓国の独自制裁の対象だったはずだ。燃料提供を求めるなど、国連安全保障理事会の経済制裁の抜け道を探る北朝鮮のしたたかさを忘れてはならない。

 おととい北朝鮮は平壌で大規模な軍事パレードを行った。朝鮮人民軍創建日を名目としたが、その記念日は今年になって急きょ変更されたものだ。五輪に揺さぶりを掛ける軍事力の誇示であると同時に、金正恩(キム・ジョンウン)体制の威信を国内に示す狙いがあったに違いない。平和の祭典に水を差す行為は許し難い。

 日米の首脳にもくぎを刺したい。北朝鮮の向こうを張るような挑発的な言動は慎むべきだ。安倍首相は五輪で延期された米韓合同軍事演習の再開を求め、トランプ大統領はワシントンでの大規模な軍事パレードを検討するよう国防総省に指示していたことが明らかになった。米国が言う「テーブル上の全ての選択肢」が軍事衝突という結末にならないよう、関係国は外交努力を尽くさねばならない。

(2018年2月10日朝刊掲載)
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