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核の役割拡大 米指針「高く評価」 外相発言に批判次々 軍縮への姿勢と矛盾

 核兵器の役割を拡大する方針を鮮明にしたトランプ米政権の核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」を「高く評価する」と表明した河野太郎外相に対し、開会中の通常国会で野党などから批判が相次いでいる。一部野党は、今後も河野氏を問いただす構えだ。

 「(NPRは)核兵器削減で後退しているのに、評価するのか」「(日本は)軍縮の先頭に立つと言うが矛盾がある」。衆院予算委員会では5日以降、立憲民主党や民進党の議員が連日、質問を浴びせている。トランプ政権初となる今回のNPRが、通常兵器の攻撃に核で報復する可能性を示唆し、小型核の導入を明記したからだ。

 河野氏は答弁で「北朝鮮の核、ミサイルは現実的な脅威。国民の生命を守るには米国の核抑止力に頼らざるを得ず、高く評価するのは当然」との説明を繰り返す。米国の方針が、核の役割低減を目指したオバマ前政権から転換したことへの懸念に対しては「世界の安全保障環境が変化する中、NPRが変わるのは当然だ」と述べた。

 7日の参院国際経済・外交調査会には、昨年のノーベル平和賞を受けた核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)国際運営委員が参考人で出席。「NPRは核のリスクをいたずらに高めている。日本は本来、警告を発しなければいけない」と苦言を呈した。

 共産党も今後、国会で河野氏の受け止めに問題があると指摘する予定だ。

 一方、日本と同じく米国の「核の傘」に頼るドイツのガブリエル外相は4日公表の談話で、NPRが新たな核軍拡競争につながるとの危機感を表明した。

 川崎氏は「両国政府の反応は対照的だ。日本は、世界を軍拡競争に陥らせる当事者になりかねないとの危機意識に欠ける」と指摘している。(田中美千子)

(2018年2月11日朝刊掲載)

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