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平和と観光 両立へ指針 広島市、具体化図る

被爆地巡りへ4ルート・案内板補修… 周遊を推進

 広島市は、平和をテーマにした観光周遊「ピースツーリズム」を推進していくための指針を作った。被爆地への旅行客が増える中、平和への思いの共有と観光振興をどう両立させるかを整理。被爆の実態などの情報発信▽環境整備▽市民の積極的な関わりの推進―を3本柱に据えた。被爆建物や遺構の保存、公開などの重要性も強調し、具体化を図る。(渡辺裕明)

 情報発信では、来訪者に被爆前の市民生活や被爆直後の実態、復興への足取りを伝えると強調。平和記念公園(中区)がある旧中島地区は人が暮らす街だった事実や、被爆10年後に白血病のため12歳で亡くなった佐々木禎子さんにまつわる千羽鶴の話を例示した。

 周遊のコースとしては、被爆建物などを巡る4ルートを設定。3月末までに日本語と英語のスマートフォンアプリを作り、ルート沿いの平和関連施設で、被爆前後や被爆後の復興の状況を拡張現実(AR)などの技術を使って伝える。まず、原爆ドーム(中区)で見られるようにする。

 環境整備では、古い案内板の補修や増設、平和記念公園周辺に不足する休憩スペースの設置などを課題とする。市民が来訪者と関わるため、交流の場づくりや設定ルートを一緒に巡るボランティアの募集なども進める。

 「平和都市」の観光政策の在り方を考えるため、市は昨年6月に被爆者や平和、観光関連の各団体の代表者ら9人でつくる懇談会を新設。2月までに7回の会合と4回の視察を重ね、来訪者に平和への思いを共有してもらうために必要な取り組みを練ってきた。市経済観光局の久保下雅史局長は「観光と平和、文化の各施策を融合させる大きな指針。庁内の関係部局と連携し実行に移したい」と話す。

 市は新年度も懇談会を続ける方針。被爆者で元原爆資料館長の原田浩座長(78)は「具体化されるかチェックしていく」と話している。

(2018年2月23日朝刊掲載)

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