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社説・コラム

平和の調べ心に届ける 被爆ピアノ演奏の萩原麻未 「3世の使命 強く意識」

 原爆のため19歳で亡くなった広島の女子学生、河本明子さんの遺品の被爆ピアノを東京のホールで演奏するイベントが、東京都墨田区で開かれた。演奏を担った広島市出身のピアニストで被爆3世の萩原麻未に、音色に込めた思いを聞いた。(西村文)

  ―8日、広島交響楽団の平和祈念コンサートの前にあった演奏に、約130人の墨田区民らが聞き入りました。
 「明子さんのピアノ」の話し掛けるような温かい音色を、東京の人々に届けることができて感慨深い。明子さんは生前、ショパンが好きだったと聞いていたので、ショパンの「ノクターン」など5曲を選んだ。横浜市在住のご親族にも演奏を聴いていただき、本当によかった。

  ―2013年から明子さんのピアノを広島市の小学校などで演奏されてきました。活動に取り組むきっかけは。
 母方の祖父母が被爆者で、つらい体験を時々語ってくれた。小学校から平和学習の機会があり、自分にできることは何だろうとずっと考えてきた。18歳でフランスに留学し、海外の多くの人たちがヒロシマに思いをはせていることを知り、より強く使命を意識するようになった。

  ―平和のメッセージを伝える音楽の力をどう感じていますか。
 音楽は心に直接届き、素晴らしい演奏は人々を幸せに近づけることができる。3年前、広島市を訪れたマルタ・アルゲリッチが明子さんのピアノを弾いた場に立ち会った。まるで、ピアノのそばで明子さんが喜んでいる姿が見えるようだった。

 平和活動に取り組む先輩の後に続き、明子さんのピアノの音色に含まれる何物にも代え難いメッセージを皆さんの心に直接届けていきたい。

はぎわら・まみ
 広島市安佐南区出身。広島音楽高を卒業後、パリ国立高等音楽院に留学。2010年、ジュネーブ国際音楽コンクールピアノ部門で日本人初の優勝に輝く。東京都在住。

(2018年3月24日朝刊掲載)

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