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原爆被害 大学で学び 広島・長崎講座 広がる輪

国内認定校50突破 海外も22 地域集中 さらなる普及へ

 原爆の被害や平和への思いを若い世代に体系的に学んでもらおうと、広島、長崎両市と広島平和文化センターが国内外の大学に開設を呼び掛けてきた「広島・長崎講座」の認定校が広がっている。2002年の開始以来、国内は50校を突破し、海外は米国を中心に22校に及ぶ。ただ地域にばらつきがあり、さらなる普及を目指す。(金崎由美)

 広島・長崎講座は大学から申請を受け、平和文化センターが授業計画書などを審査。認定すれば、講義で使うDVDや冊子などの教材を提供する。学内の講義と被爆地での現地学習があり、現地学習の際は被爆証言の手配やスケジュール作成を支援する制度だ。

被爆体験を理解

 講座の一環として今月上旬、国際ロータリーの奨学生として国際基督教大(東京都三鷹市)大学院で紛争予防や平和構築を研究する留学生8人が3日間、広島を訪問した。

 原爆資料館を見学し、被爆者の小倉桂子さん(80)から体験を聞いたほか、被爆樹木保存に取り組むNPO法人ANT―Hiroshima(広島市中区)のアナリス・ガイズバートさん(24)からは「人間より長く生きる樹木は、被爆の記憶を生きて伝える最後の存在になる。核被害者は人間だけでない、という警鐘でもある」と説明を受けた。

 コロンビア出身のロレーナ・ロドリゲスさん(26)は「被爆体験と復興を多方面から理解する貴重な機会になった。同時に原爆被害を経験しながら、事故後も原発を維持する現在の日本に対する問いも浮かんできた」と熱く語っていた。

 広島・長崎講座は高等教育の現場に「平和学習」を取り入れてほしい、と2000年に当時の秋葉忠利広島市長が提案し、11年に松井一実市長が就任してからも、海外出張の際に現地大学で自ら講演するなど「トップセールス」を行っている。

首長会議で推進

 講座認定は大学として教える分野を問わない。被爆者のメッセージを理解してもらい、核兵器廃絶や世界平和の実現について考える内容であることが条件。さらに現地学習についても被爆証言の聴講や平和関連施設の見学を盛り込むことが求められる。同センター平和連帯推進課の西川地江子さんは「最大限にヒロシマを学んでもらえるよう、きめ細かく要望に応じるようにしている」と話す。

 ただ日本国内では北海道と東北の認定校が少なく、中国地方も広島県外には広がっていない。海外では専ら米国に集中するなど世界的な広がりはこれからだ。

 昨年、長崎市であった平和首長会議の総会でも、普及の方針が17~20年の行動計画に盛り込まれた。同センターの末広恭子・平和首長会議担当課長は「会員都市のネットワークをもっと生かしたい」と語る。

(2018年3月26日朝刊掲載)

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