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被爆地 期待と疑念 北朝鮮「核実験場廃棄」

「本当なら、大きな進展」

 北朝鮮が核実験の中止や核実験場の廃棄を決定したと報じられた21日、被爆地広島では、驚きとともに、「核兵器廃絶への一歩」と歓迎の声が上がった。ただ発表では、開発したとされる核兵器の放棄まで踏み込んではいない。これまで核実験やミサイル発射を強行してきた北朝鮮の姿勢から懐疑的な見方も根強い。(永山啓一、川上裕、滝尾明日香)

 「もし本当なら、とても大きな進展だ」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(76)は、驚きを持って受け止めた。ただ、「昨年まで核やミサイルでの威嚇を繰り返していた国が、急に『優等生』になったように感じる」とも語り、北朝鮮の真意を測りかねた。

 広島市中区の原爆ドーム周辺では、この日も全ての国に核兵器禁止条約の締結を迫る「ヒバクシャ国際署名」が行われていた。行き交う観光客に協力を呼び掛けていた、もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(73)は「北朝鮮が表明をしたこと自体、歓迎したい」と評価した。

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議準備委員会が23日からスイス・ジュネーブで始まることに触れ、「被爆国の日本政府の役割は重要。米国にも核軍縮を迫るべきだ」と力を込めた。

 北朝鮮の「決断」は、6月までの開催が見込まれている米朝首脳会談への布石との見方が強い。県朝鮮人被爆者協議会の金鎮湖(キム・ジノ)理事長(72)は「米国が北朝鮮への敵視政策をやめるきっかけになる会談になってほしい」と期待した。

 一方、核兵器の放棄に言及していない北朝鮮の姿勢に疑問の声を上げる市民も多かった。

 県被爆二世団体連絡協議会事務局長の角田拓さん(54)=広島市東区=は、北朝鮮の発表を歓迎しつつ「核開発を本当にやめるのだろうか」。西区の専門学校生日高竜太さん(18)も「いつか核実験を再開するのではないか。ミサイルも飛んでくるかもしれない」と不安を口にした。

(2018年4月22日朝刊掲載)

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